鏡よ鏡。僕の顔は?
おはよう。
突然だけど、今日はちょっと特別な日だ。
別に誰かの誕生日とかそういうのじゃない。
寧ろ普段と何も変わらない、平凡な一日。
だけど僕にとっては超重要。
今まで気になっていて、実は確かめる機会もあったけど怖くて確認出来なかった事実。
そう、僕の顔。
……何さ。
そりゃ気になるよ。
乳母さんやらお兄ちゃんやら、かわいいかわいいと言ってくれるのはとても嬉しい。
だけどそれは僕が赤ちゃんだから。
僕は男だ。
この体の性別が男であることは生まれた時から分かっている。
小さくたってちゃんと象徴があるからね。
問題は外見。
お兄ちゃんもお姉ちゃんも、さらに言えばお母さんもお父さんも皆美形だ。
失礼な話だけど、おじいちゃんに連れ回された一週間で顔を合わせた使用人の人達の顔は平凡だった。
だから尚更家族の顔のレベルの高さを感じる。
その流れで言えば僕の顔も整っているだろう。
だが一つだけ、でもとても大きい懸念がある。
それは僕が転生者だということ。
僕は普通じゃない。死産だったとも聞いている。だとすれば美形から遠のいている可能性も捨て切れない。
あと個人的な話だけど、女々しい顔は好きじゃない。
前世でもよく女みたいだとからかわれた。
そう言ってきた人にはもれなく割とマジなパンチを贈呈した。病院には迷惑をかけたな。
逞しい体は努力で手に入れる。
けど顔はどうにもならない。整形は邪道だ。そんな技術があるのかは知らないけど。
そんな訳で鏡の前に立ってみる。
二ヶ月くらい前から部屋に置いてあったんだけど、僕が前に立つのを全力で拒否していたから今じゃただの物置になっている。
申し訳ないけど、勇気が出なかったんだ。
今日、ようやくちゃんと使うから許して欲しい。
お兄ちゃんに見守られて、おそるおそる鏡の前へ。
部屋に置いてあるのは姿見。
お兄ちゃんがギリギリ全身映るくらいの小さなやつ。
これから僕がおめかしするタイミングとかで使うものらしい。
ピカピカの綺麗な鏡の前に立つ。
そして、おそるおそる顔を上げる。
「…………」
目の前にいたのはかわいい女の子。
え、いや……うそ。
女々しいとかそういうのを超えてる。
赤ちゃんってこんなに女の子っぽい顔だっけ?
うーん、お兄ちゃんが可愛いというのも分かる。
これが自分じゃなければ惚れそうなくらい。
ただ、完全に女の子だなぁ……。
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