抗えない心の波
おじいちゃんはその後もずっと僕を抱えて大半の時間を過ごした。
凄い濃密な日々が二週間続いて、今日がお別れの日らしい。
突然現れたと思ったら立ち去る時も唐突で、本当に嵐のような人だった。
ということでお見送り。
お姉ちゃんの時と同じように家族総出で見送る。
「近いうち、また来る」
「あぁ。今度は連絡してくれよ」
「……ヒカルを大事にな」
お父さんおじいちゃんが話してる。
そうそう、おじいちゃんは父方の、お父さんの父親だった。
何の連絡もなしにおじいちゃんがやって来て、お父さんが慌てて家に帰ったんだとか。
その後も何か話していたけど、声が小さくて分からなかった。
親子だし色々と話すことがあるのかな。
「ヒカル、元気でな」
「あい!」
おじいちゃんの手が僕の頭に伸びる。
ゴツゴツした男の人の手。だけどとても優しい。
おじいちゃんが乗り込んだ馬車はとても豪華。
気の所為かもしれないけど馬もちょっと上品な感じ。
ゆっくりと動き出す。
あっという間だった。
今までで一番激動なんじゃないかってくらい。
また会いたいな。
……もう、お別れか。
あれ。
「じじ、じーじ……じーじ」
これは、ちょっと初めてだ。
行って欲しくない。寂しい。
一緒にいたい。
別にこれが今生の別れでもない。また来ると言ってくれたし、実際そうだと思う。
でも目の前でドンドンと小さくなっていく馬車に、その中にいるおじいちゃんに待って欲しいと思ってしまう。
玩具を頭に落としたり転んだり、制御出来ずに泣いたことはあった。
けどこれは、ちょっと意外。
自分でも泣くと思ってなかった。
だからなのか感情が抑えきれない。
お兄ちゃんに宥められても涙が止まらない。
「じーじ、じーじ……」
結局僕は馬車を見送ってしばらく、ぐずったままだった。
胸にぽっかり穴が空くというのを初めて経験した。
この喪失感は、とても辛い。
別におじいちゃんは死んだ訳じゃない。
馬車に乗って自分たちの家に帰っただけだ。
精神で理解していても心がそれを分からない。
ある程度は大人な僕と、まだまだ子供のぼく。
きっもこれからも同じようなことがある。
その時に、また何も出来ずに泣くのは嫌だなぁ。
そう思っていても、変われっこない。
こればかりは僕の赤ちゃんとしての体の問題だから、経験して慣れていくだけ。
でも出来ることならその回数を減らしたい。
その為に出来ることを精一杯やろう。
結局、二日経った頃にはすっかり収まって、僕はまた平和な日々を過ごした。
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