対策とおはな
一歩一歩、慎重に歩いて行く。
僕のペースに合わせてお兄ちゃんとお母さん、あと護衛の人が周りを歩いている。
今のところ、前のようなふわふわ感は無い。
この調子なら気絶はしないだろう。
僕の予想が正しかったらもう外に出ても気絶しないと思うけどね。
実は気絶した理由には心当たりがある。
出来たらと言った方が正確かな。
連日モヤを圧縮して、体の中でお腹とか胸の辺りまで小さくなったくらいの時。
僕の目の前、部屋の中の空気にモヤがあった。
すっかり忘れていたけど、そういえば最初はこの外のモヤに吹き飛べと念じたら魔法で風が起きたんだ。
それが見えるようになっていて、更にそれが掃除機に吸われるホコリみたいに僕の体に吸い込まれていた。
流石にあれはビックリした。
吸い込まれる一方で僕の体から出ていく様子はない。
なんだかよく分からなかったけど、なんとなく悪いものじゃないってのは分かった。
外で倒れたのは多分だけどこのモヤが原因。
家の中に比べて外のモヤの密度が段違い。
だからきっと、いきなり濃い密度のモヤを吸い込んじゃって倒れたんだと思う。
だから今、僕はモヤを吸うのを止めている。
皮膚に蓋をするイメージで体内のモヤを張り巡らせたら成功した。やったね。
「見て、花が咲いてるよ」
「はな」
玄関から右手。
二度目の土の感触をそこそこに楽しみつつ、前にいるお兄ちゃんを追いかける。
結構な広さの庭。
抱っこされていない、今の僕の目線での外の光景。
春なのか花壇には色とりどりの花が咲いている。
最近は歩くのに苦労しない。
土の地面は新鮮だけど歩きにくさは無い。
地面との距離が近い。
ふんわりと花の匂いがして自然とテンションが上がる。
小さい自分の手を伸ばして花を掴む。
「お花さんは柔らかいから、そっとだよ」
「そっちょ」
花にも優しいお兄ちゃん。
この手は小さくてちょっと動かしにくいから慎重に。
茎の手触り。花びらの鮮やかな色。
土に混ざった花のいい香り。
そのどれもが新しくて新鮮で、ワクワクする。
こんな高揚するのは初めてだと思う。
「おはな!」
「うん。綺麗だね」
思わず言葉が出る。
目の前の全てが輝いて見える。
「ほら、こっちはまた別のお花だよ」
「おはな」
別の花。
色も形も違う。
当たり前のことだけど、それがとても面白い。
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