土の感触といつもの
皆に見守られて、おそるおそる第一歩。
家の中のタイルから外に出る。
なんだっけ、僕にとっては小さな一歩だけど人類にとっては……まぁいいや。
取り敢えずよいしょ、っと。
……おぉ。
いや、うん。
別に普通の地面。だけどこの、何とも言えない感動がある。
玄関前がいきなり土って訳でも無いしね。
外の感じはする石畳を踏みしめて歩く。
「ヒカル、おいで」
いつの間にか横にいたお兄ちゃん。
お兄ちゃんを追い掛けるように歩き出す。
外に出る時はいつも乳母さんに抱えられていた。
だから、今の僕の目線はとても新鮮で楽しい。
一つだけまだ歩くのに慣れてないから少し転びそうなのが難点かな。
外に出て右。
石畳だった地面が土になる。
靴越しに感じる柔らかい地面。
……楽しい。
歩くのが楽しい。ただ歩くだけ、それがとても楽しいことに感じる。
不思議だけど、歩くだけで楽しい。
少しふわふわした気分だ。
とてもいい。
「……ヒカル?」
お兄ちゃんが呼んでいる。
どうしたんだろう。
少し日が眩しいな。
ちょっと、頭がクラクラして……。
■ロ■ロ■
最近気付いたことがある。
僕って気絶しすぎじやない?
ということでおはよう。
意識が遠のいていく感覚に慣れてきている自分がちょっと嫌。
気絶する方が悪いのかもしれないけどさ。
「良かった、目が覚めた!」
目を開けると泣きそうな顔のお兄ちゃん。
この顔を見るととても胸が痛い。ごめんよ、お兄ちゃん。
ここはいつもの部屋。
いるのはお兄ちゃんとお母さん、あとは初めましての男の人。
もう目はだいぶハッキリ見える。
赤ちゃんの目の発達がいいのかな。前世は視力が弱かったから余計に見えるのかもしれない。
眼鏡が必要ないのは便利だな。そもそもこの世界にあるのかすら知らないけど。
さて、お決まりみたいに気絶しちゃった訳だけど、原因が分からない。
いつもなら僕が何か行動をして、その結果意識を失うってのとが殆どだったけど、今回は何もしていない。
「ふむ……魔素酔いですな」
初めましての男の人から興味深い単語が出て来た。
“魔素”とな?
「この年で、ですか」
「生まれつき感知能力に長ける子供は少なくありません。今回初めて外を歩いたということですから、地面近くに溜まっている魔素に当てられたのでしょう」
なるほど?
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