こっちも一年ぶりの再会
それから僕の生活は少し変わった。
朝起きると乳母さん、とお母さん。
生まれて直ぐくらいに離れ離れになったはずのお母さんはこわいくらい僕の動きを読んでいて、何をするにも苦労しない。
乳母さん並みの察しの良さであれやこれやとしてくれる。
それでいて全部を用意する訳でも無い。
僕がやろうとすること、やれることはサポートするだけ。
そのバランスが丁度いい。
おかげで僕は快適に生活できている。
お兄ちゃんも変わらず僕に構ってくれる。
むしろお母さんと僕を取り合うことがあるくらい。
構ってくれるのは嬉しいけど、取られたくないからって強く抱き締めるのは勘弁して欲しい。
こちらの身が持たない。
そんな生活がかれこれ二ヶ月続いた頃。
僕の部屋に新しい来訪者が現れた。
■ロ■ロ■
「やぁヒカル、おはよう」
「にぃ!」
いつもと変わらない朝。
剣術の稽古が無い時は僕の部屋を訪れてくれるお兄ちゃん。
でも今日はその後ろに見知らぬ影があった。
「ほら、大丈夫だから」
「……」
お兄ちゃんの背中からチョコっと顔を出したのはオレンジ色の髪の女の子。
この鮮やかな髪の色は……お姉ちゃん?
確か、初めて外に出る時に会ったような。
お兄ちゃんやお父さん、お母さんと感じた繋がりみたいなものを感じるから、家族であることに間違いは無い。
実は男でした、みたいなことを言われない限りはお姉ちゃんだろう。
「…………」
「……」
今この場には乳母さんとお兄ちゃん。
そして僕がいる。
お姉ちゃんらしき女の子はゆっくり僕に近付いて、人差し指で恐る恐る僕のほっぺたをつつく。
前もこんなことしたな。
確かくすぐっまくて指を掴んだら逃げられたんだっけ。
また逃げられても嫌だし、取り敢えず笑っておこう。
「っ……」
逃げられた……。
何をしてもダメなのだろうか。少し、いや結構悲しい。
後ろで乳母さんとお兄ちゃんが必死に笑いを堪えている。
そんなに僕の笑顔って変なのだろうか。
「ヒカルは喜んでいるだけだよ。そんなに怖がらなくても平気だって」
「でもぉ……」
あらいい声。
お兄ちゃんとはまた違う、とても可愛らしい鈴のような声だ。
それに、明瞭になった視界だとよく分かる。
お兄ちゃんに負けず劣らずのThe、美顔。
お兄ちゃんもお姉ちゃんもとても綺麗だ。
……僕もイケメンだよね?




