初めましてお母さん
乳母さんに抱っこされて階段を下りる。
普段僕がいるのは三階の奥の部屋。
そこから階段を一つ下りて少し歩くと、吹き抜けがある。
そこが僕の家、この大きな屋敷の正面玄関だ。
お兄ちゃんが階段を下りる。
いつの間にかその後ろにはツンデレ君がいた。
乳母さんと僕もその後ろについて歩く。
よくみると玄関周りには沢山の人。
みんな玄関の方を向いている。
お兄ちゃんがその真ん中、扉に真正面から向き合うように立つ。
その斜め後ろにツンデレ君。
僕はお兄ちゃんの横に下ろされる。乳母さんもツンデレ君みたいに僕の斜め後ろに立った。
そして、扉が開く。
「「「お帰りなさいませ」」」
「おかえりなさい、お父様。お母様!」
両開きの大きな扉が開いて、ゆっくり屋敷に入ってくる。
自分の足で立っているからなのか巨人のようにも見える男女二人。
女の人は初めましてのはずだ。記憶には無い。
それでも、分かる。
久しぶりに見た男の人、お父さんの横にいる女の人が、僕のお母さん。
「カル……ヒカル!」
僕がなにか反応するより前にお母さんが動く。
凄く早い動きで僕の前まで来たと思ったらぐわっと抱き上げられた。
凄く強い力なのに痛くなくて、むしろ少し、安心する。
「会いたかった……私の子…………」
「あぅ」
抱き締める力は強いのに苦しくない。
初めてのはずの香りが心地よくて安心する。
乳母さんも安心する香りがした。でもそれとはまた違う安心感。
改めて、お母さんという存在を感じた。
「お帰りなさいませ奥様」
「あぁニャシー久しぶりね。変わりなさそうで何よりだわ」
お母さんはその勢いのまま乳母さんに話し掛ける。
そして、横にいたお兄ちゃんに。
「ルーク!久しぶりね元気してた?」
「お母様!」
結構大きいお兄ちゃんを軽々持ち上げる。
これが母の力……。
あいや、お兄ちゃんがまだ小さいのか。
僕からだと大きく見えるお兄ちゃんもお母さんからしたら全然子供だ。
ひとしきりお兄ちゃんとベタベタしたお母さんはそのまま出迎えに来ていた人全員と挨拶をしていた。
名前を把握しているっぽいし、みんなの空気がすごく幸せそうなのが分かる。
「パルゥ、積もる話はあるだろうが、一旦部屋に戻ろう」
「そう、ね。ごめんなさい、つい熱くなっちゃって」
お父さんの言葉でようやくみんなが動き出す。
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