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一年目の僕



おはよう。久しぶり。

そうでもない?

この話、昔もやったな。


そんなことは置いておいて。

今日は特別な日だ。

離乳食が始まった頃からだいたい三ヶ月くらい過ぎた。


起きて、お乳を貰って、お兄ちゃんの剣術を見学して、絵本を読んで。

離乳食食べて、歩く練習して、また離乳食食べて寝る。


目立った変化は無い。

歩くことはスムーズになったけど速度は出ないし、油断していたらすぐに転んでしまう。

離乳食も慣れてしまえば普通の食事だ。

今までに比べれば代わり映えのないこの数ヶ月はあっという間に過ぎた。


今日も正直、僕にとっては日常の一日だった。

だから朝お兄ちゃんが部屋に来てとき、驚いた。


「ヒカル、誕生日おめでとう!」

「たぅー」


そう、今日は僕の誕生日だったのだ。

カレンダーとかは無いし、体感で日々を過ごしていたから正確な日付は知らなかった。


あの日、ビルに押し潰されて死んで。

そしてこの世界にやってきて、一年が経った。


振り返ってみるとあっという間だった。


「今日はお祝いだ!」

「えぇ、本当に」


祝ってくれるのは嬉しいけど、なんか大袈裟な気がする。

半年の時もそうだった。

まるで僕がいつ死んでもおかしくないみたいな。

……否定出来ない。


「一年経っても何も無かったってことは、お母様が戻ってこられるんだよね」

「そうです。きっと今頃リザフ様が奥様を迎えに行っていると思いますよ」


お母様。

乳母さんがいるからあまり違和感が無かったけど、そう言えば僕はまだお母さんにあった記憶が無い。

ぼんやりと産まれたての時は一緒にいた気もするけど。


お兄ちゃんの言葉から察するに、僕を産んだ時に色々あったのかもしれない。

そんな話をしていると扉がノックされて、女の人が乳母さんに小声で何かを伝えた。


「噂をすれば、戻られたようですよ」

「やった!行こう、ヒカル」

「あい」


どうやら帰ってきたらしい。

いつにも増して元気のあるお兄ちゃんを追い掛けて部屋を出る。


一ヶ月くらい前から僕は一人で歩くことが増えた。

階段を上る時だったり長距離は抱っこされるけど、それ以外の移動は基本僕が一人で歩く。


自分の足で動けるというのはとても楽しい。

後ろで乳母さんが見守ってくれるから自由に動けるのもいい。

階段までなら簡単に動ける。

まだ階段の昇り降りは出来ない。今の僕にとって階段は崖のような危険地帯だ。

ということでここからは乳母さんにお願いする。

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