お兄ちゃんの一日 Ⅱ
「ヒカル様がよければ、見学しませんか?」
どうにかして見学したいと伝えようとしたら、先に提案して貰えた。
これはありがたい。
見たい。とても気になる。
「……そうですね。お邪魔します」
「ではシートを持ってこさせますね」
テキパキ準備が進んで、僕と乳母さんは少し離れたところで見学させてもらうことになった。
気づかなかったけど庭にはそこそこの人がいて、頻繁に僕を気に掛けてくれる。
そしていよいよ訓練の再開。
またあの男の人とお兄ちゃんが打ち合うみたいだ。
「先程の反省を活かして。集中を欠いてはいけませんよ」
「うん!」
無言で睨み合う。
おお、凄い。まるで達人同士の居合を見てるような威圧感がある。
それにしても、こんなに間を開けるのか。
もっと近い距離でやるものだと思っていた。
「てやっ!」
お兄ちゃんが動く。
思いっきり地面を蹴って男の人に近づく。
そして木刀を振り下ろし。早い。
そこから先はぜんぜん見えなかった。
残像っぽいものはあるけど、目で追えない。
しまいには早すぎて目が回ってしまった。残念。
「動きを見て目を回すとは……末恐ろしいですな」
「そうなの?」
「目で追う、と言うのは基本の一つです。それにヒカル様はまだ1歳にも満たない子供。普通なら目の前で起こっていることが分からなくて困惑するでしょう」
ふむ。
確かに僕の肉体は赤ちゃん。
まだ未発達な体ではあのスピードに追い付けなかったのかもしれない。
精神状態は高校生だった僕のままだから尚更、理解しようとしてしまったのも原因かもしれない。
「ヒカル様は奇跡の子です。将来はきっと、とんでもないことを成し遂げる御方になるでしょう」
そんな期待の目を向けないでほしい。
ボクは平和に生きられたらそれでいいのだから。
■ロ■ロ■
運動の後は勉強の時間。
ということで今度はお兄ちゃんの勉強にお邪魔している。
と言っても、お兄ちゃんが先生の話を聞いている横で僕は絵本を眺めているだけ。
いつもお兄ちゃんに読んでもらった物語とはまた違うお話。
同じ絵本しか読んだことがなかったから、別の本を読むと知らない単語が出てくる。
簡単なお話だから予想は出来るし、分からなかったら乳母さんに聞けば教えてくれる。
そうして一日があっという間に過ぎていく。
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