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お兄ちゃんの一日 Ⅰ



おはよう。

気絶するみたいに寝てしまった。

おそらく原因はあのモヤ。


試したいのは山々だけど、それで寝ちゃうのももったいない。

しばらくは寝る前に試すだけで我慢だな。


朝起きたら横にお兄ちゃん。

穏やかな寝顔を浮かべてる。癒されるなぁ。

ずっと眺めていたい気持ちもあるけど、もうすっかり日が昇っている。


起こさないようにコッソリ移動しよう。

いてっ。

……あ、これは久しぶりのやつ。

護衛の人、お兄ちゃん。ごめんなさい。

これは僕にもどうにも出来ないんだ。



■ロ■ロ■



朝から元気に泣いた僕は今、外にいる。

いつもは家を一周まわって終わりなんだけど、今日はお兄ちゃんの声が聞こえたからそっちに向かってもらっている。

ずっと一緒にいるからか、乳母さんは僕のやりたいこととかを汲み取ってくれる。


声がしたのは玄関から左の方。

そこにはそこそこな広さのお庭があって、たまに護衛の人とかが訓練している。

噂をすれば。よく見かける人が木刀を構えていた。


「はっ、せい!たぁっ!」


対戦相手はお兄ちゃん。

汗が滴る姿もカッコイイ。


「あ、ヒカル!」

「隙ありっ」


僕に気付いて笑顔を見せた瞬間、お兄ちゃんの頭に木刀が振り下ろされる。

鈍い音が聞こえたから相当痛そうだ。


「いかなる時でも、隙を見せてはいけませんよ」

「うぅ〜」


僕からすれば大きなお兄ちゃんも、大人と並ぶとただの子供。

いつもとは違うお兄ちゃんの姿は新鮮でとてもいい。


「こんにちは、ヒカル様。それにニャシーさんも」

「えぇ、こんにちは」

「い!」


男の人が僕と乳母さんに挨拶する。

乳母さんの名前はニャシーって言うのか。


「はっはっは、元気な挨拶だ!ヒカル様は聡明ですな。まるで我々の言葉を理解しているかのようだ」

「ヒカルは凄いんだ。もう歩けるんだよ!」

「本当に凄い方です。……たまに命知らずなことをしますけどね」


せっかくお兄ちゃんが褒めてくれたのに、その後の乳母さんの一言で三人の視線が痛い。

それは本当にごめんて。


「ところで、何かあったのですか?」

「いえ。ただ、ヒカル様が興味を示したので」

「それはいい。ヒカル様も将来剣術を嗜むでしょうから、今のうちから興味があるのはいい事です」


お兄ちゃんの声が聞こえたからってだけだけど、剣術に興味がない訳でもない。

せっかくだし、見学したいな。

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