ぼくの命
どうやら僕は全く信用されていないらしい。
……当然か。
にしても、あれは魔法だったのか。
魔法か、ワクワクするな。
もしかすると体内のモヤも魔力とかそういったモノなのかもしれない。
試したい気持ちはあるけど、流石にもう自重する。
命の危険があるかもしれないって分かったから尚更。
しばらくは歩く練習あるのみ。
っと、この音は。
「やぁ、おはよう。ヒカル」
「ぁい」
来た。お兄ちゃんだ。
声がハッキリ聞こえるようになってからよりお兄ちゃんの魅力が増えた。
心地良くて聞き取りやすい声。
だんだんハッキリ見えるようになってきた顔と合わせて、とんでもないイケメンがお兄ちゃんなのだと実感する。
自分の顔をまだ見たことがないけど、同じようにイケメンなのだろうか。
お兄ちゃんはイケメンで僕はパッとしない、なんて未来がぜんぜん否定できない。
「今日も可愛いな〜ヒカルは」
「うー」
「……そう言えば、もう半年ですね」
半年。
きっと僕が産まれてからの時間かな。
「そっか……」
「ぅ?」
おわっと。
お、お兄ちゃん?
抱き締めてくれるのは弟冥利に尽きるけど、ちょっと苦しいかも。
「ありがとう」
「……」
「生まれてくれて。今日まで生きててくれて、ありがとう」
涙声で、ギュッと僕を抱いてくれるお兄ちゃん。
それがとても暖かくて。
だからこそ、少し申し訳なく思う。
今までの僕は自分の命にさほどこだわりが無かった。
別に死んでもいいや、って心のどこかで思ってた。
当たり前だけど僕はお母さんに産んでもらって、育てられて。
乳母さんにお世話されて、お姉ちゃんやお兄ちゃん。ツンデレ君。
その他にも多くの人に支えられて、大事にされて。
今までとは違う。
この命は僕のものであり、僕のものではない。
僕一人が簡単に手放していい命じゃない。
……こんなにも僕を想ってくれる人がいる。
それがとてつもなく嬉しい。
生きよう。精一杯、元気良く。
「ルーク様、そろそろヒカル様の限界が近いです」
「え? あっごめ、大丈夫?」
「あ゛い……」
生きる決意をした直後に三途の川を見た気がした。
危なかった。




