あの時はごめんて
おはよう。久しぶり。
この会話も何度目だろうか。それは置いておいて。
急に立ち上がれた日から三日が経過した。
僕は立ち上がりをマスターした。
ちなみに掴まり立ちもちゃんと出来る。
「凄いよ、ヒカル!さぁ、おいで!」
今は歩く練習中。
ゆっくり歩くお兄ちゃんを追いかける。
歩きもかなり順調だ。とはいえ赤ちゃん。少しでも油断したら転んでしまう。
そうそう、転んでも大丈夫なように床にはタオルとかがいっぱいある。
それに受け身も取れるようになったから転んで泣くことはないと思う。
「うー!」
「うん、いい子いい子。それじゃあ、絵本読もっか」
「あぃ」
歩き疲れたら絵本の時間。これは前と変わらない。
本の内容は変わらない。けど、結構楽しい。
お兄ちゃんのくそイケボを聞けるのもあるけど、やっぱり文字だ。
夢の中であの女の子にあってから言葉は分かるようになったけど、まだなんと言うか、違和感がある。
読み方や意味は分かるけど間がいる感じ。英単語を見て日本語に変換している、と言えば分かりやすいかな。
目の前の文字を認識出来てるのに、むりやり日本語に頭が変えちゃう。
だからそれが違和感。
絵本を読んでその違和感を無くす練習をしている。
「……おしまい」
「本当に、絵本がお好きなんですね」
「そうなの?」
「えぇ。他の赤ちゃんはこんなに大人しくありません。……もっとも、ヒカル様は生まれた時から大人しいですけど」
乳母さんの視線が痛い。
確かに、中身が僕だから赤ちゃんっぽい行動はしてないかも。
何度かやらかしたり、色々と迷惑をかけてしまった。
「ヒカルは不思議な子だ。初めて会った時も雰囲気が違った」
「本当に。だからこそ私は恐ろしいですよ。これから先が」
「これから? 医者はもう問題ないって」
医者?
もしかして、意識ない時にそんなことがあったのかな。
……あの女の子の言う通り、僕は命を捨てにいってたのかもしれない。
今更ゾワッとする。怖、僕。
「まだ寝返りも打てない頃に魔法を使ったんですよ?そんな子がこれから先何をやらかすか……」
「あぁ……」
お兄ちゃん!否定して、お願い!
そんな、この子ならやりかねない、って視線で見つめないで!
ほら、何もしないよ?笑顔笑顔。
「「…………」」
なんか言って!
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