勇者の存在と急成長
「こうして、世界は平和になりました……おしまい」
黒髪黒目の異世界の勇者、ふむ……。
これ、完全に同郷の人だよね。名前もヤマトだし。
僕以外にも異世界人が居たというのは、驚きもあるけど少し安心する。
同じ出身の人が作った国か、一度行ってみたいな。
当たり前だけど、僕の居るこの世界は全然知らない事ばかり。
今まであまり興味が無かったけど、この本で興味が出てきた。世界中の国を回ったりとか、面白そうだ。
「ふふ、ヒカルは可愛なぁ」
僕が興味津々だったからかお兄ちゃんが頭を撫でてくれる。
あ、ちなみにヒカルは僕の名前。
前世と同じ名前だから分かりやすくいていい。
さて、本を読んでる間に体は回復したし、運動を再開しよう。
掴まり立ちが出来ればまた進展が、っと。
…………あれ?
「ヒ、ヒカル……今……」
「一人で、立ち上がった…」
お兄ちゃんが固まった。乳母さんも。
僕も含めて全員固まった。
立てた。掴まり立ちとかじゃなくて普通に。
嬉しい、けどそれより困惑が強い。
急すぎてビックリした。
お兄ちゃんはまだフリーズしたまま。そろそろ戻ってきて。
っと。
「あっ……ヒカル!」
歩こうとしたら流石に上手く行かなかった。
お兄ちゃんの方にこてんと転んでしまった。
あ、これダメなやつ。久し振りに来る。
別に痛くない。ちゃんと手で守った。でもそうじゃない。
込み上げてくるこれは止められない。
僕は二度目のマジ泣きをした。
■ロ■ロ■
二回目のマジ泣きは同じく泣きそうになりながら必死に宥めてくれたお兄ちゃんのお陰で直ぐに終わった。
優しく背中をトントンしてくれている。いつも以上に優しくて落ち着く。
耐性がついたのか最近は撫でられても寝ない……ことはないけど。前よりは眠くなくなった。
この急にくる感情もどうにかしなければ。
とは思うけど、急にくるから対策のしようも無い。
別に病気ってわけじゃないし、むしろ普段泣かなすぎるくらいだから問題は無いんだけど。
急に来られると困る。
僕もだけど、なによりお兄ちゃんと乳母さんまで泣きそうになるから罪悪感が……。
でも収穫はあった。
掴まり立ちをスキップして、普通に立ち上がれたんだ。
このまま歩く練習をすれば行動範囲が一気に広がる。
やっぱり、目に見えた変化は良い。
ちゃんと成長しているのが分かるから楽しくなる。
よし、明日も頑張るぞ!
ってことでおやすみ。
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