数センチの成長
おはよう。
早速だが僕は今、試練の真っ最中にいる。
自分の使っているベビーベッドの柱に寄り掛かり、鍛えていたとはいえ未発達な足にどうにかこうにか力を入れる。
手でしっかり柱を掴み、やけに重く感じる頭に引っ張られないように立ち上がろうとする。
「頑張れ!頑張って!」
「もう少し!あとちょっと!」
後ろでは乳母さんにお兄ちゃん、そしてツンデレ君が固唾を飲んで僕の行動を逐一見守ってくれている。
その期待に応える為にも、僕は今、立ち上がる!
コテン。
…………。
また失敗。くそう。
あぁ、そんな悲しそうな顔をしないでくれお兄ちゃん。ごめんよ、僕が不出来なばかりに。
一昨日から僕はつかまり立ちの練習をしている。
初日でお兄ちゃんに手伝ってもらい、すんなり立ち上がれた僕は調子に乗って人ではなく物を使って立ち上がろうとした。
しかし何故か上手くいかず、昨日今日と挑んでは転ぶの繰り返し。
そろそろ心にくる。少し泣きそう。
原因は分かってる。
立ち上がろうとすると無意識に動く、体内のモヤ。
これが悪さをしてる。
どうやら立ち上がろうとする力む動作をすると勝手に動いちゃうらしい。そして勝手に動かれると体が不自由になる。
思うように足に力が入らなくなっちゃうんだ。
お兄ちゃんの時はきっと立ちやすいように助けてくれたから足に負担がかかりにくかった。
むむむ、困った。
暇だったからまた調子に乗って練り過ぎて、最近じゃ固くても水飴の柔らかい状態に近い。
なんかジャムみたいな半液状な感じ。
今は考えても無駄。そんな気がするので気を切りかえてお兄ちゃんの元へ。
因みにはいはいはもう完璧にマスターした。意外と簡単だったな。
そんな訳で楽しそうなお兄ちゃんを必死に追いかけて全力で遊ぶ。
匍匐前進の時よりも疲れやすいけどその分体をめいっぱい動かしてるし、何より早い。
走り疲れたらお兄ちゃんは絵本を読んでくれる。
毎回同じ本だけど、お兄ちゃんの声が超聴きやすくて可愛いもんだから全然飽きない。
それに、
「むかーし、むかし。そのまた昔の、物語……」
新発見があった。
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