期待外れと期待以上
「はあ~……」
「でっかい溜息だこと。リットネグさんの言った通りじゃないか」
「まさか本当にここまでとは」
さっそくダンジョンへ、と意気込んでいた僕に対してリットネグさんはあまり気乗りしない雰囲気だった。
誰でも入れるダンジョンというだけあって期待するような冒険はない、と言われていたけど。
もう少し、もう少しあると思ったんだけどなぁ。
「はあ~……特に買うべきものも無いし、エモルドゥが戻るまで暇になっちゃったな」
「たまにはゆっくりしてもいいだろう。というか、働きすぎなんだよアンタは」
「むう」
言われればそうか。
ま、たまにはのんびり過ごすかな。明後日にもなればエモルドゥも帰ってくるでしょ。
■□■□■
「……それで、私がいなかったほんの僅かな時間で何をやらかしたんですか」
「それが僕にもさっぱり」
男爵さんにお金いっぱい貰っておいてよかった。
これだけあれば部屋の修繕費に使えるでしょ。
「もう一度経緯を説明してもらえますか?」
「それは――」
のんびり過ごすと決めたのはいいものの暇すぎた僕はエルピスと組手をすることに。
部屋の中だからってことでゆっくりと動きの確認をする型組手ってやつをやってたんだけど。
「その時に僕が金的しちゃって、動揺したエルピスに突き飛ばされた僕がうっかり力を入れちゃって……こうなった」
女の子みたいに叫んだエルピスの拳が見事に僕のバランスを奪ってすっころりん。
そこまでなら良かったんだけど、尻もちをついた時に思わず力が入っちゃって。
ヤバいと思ったときには部屋は壊滅状態だった。
「……リナ様の言う通りですね」
「何か言ってたの?」
「言伝と、“コレ”を」
さっすがリナ先生。仕事が速い。
見た目は普通の腕輪だ。多分あのゴブリンから出てきたやつだ。
嫌な感じは消えてる。
「リナ様曰く、それはヒカル様専用のものだと。他の人が持っていてもうんともすんとも言わないそうです」
「へ~。早速付けてみよう」
おお、この感じは。
「リナ様からは、あまりそれに頼りすぎないように、と」
「うん。あとでお礼の手紙を書かなきゃ」
改めて流石だリナ先生。
仕事が速いうえに僕の期待以上のものだ。
これはどこかで慣らしをしなければ。……でも肝心のダンジョンは行けないし。
困ったな。
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