初めてのダンジョン
「いようし、行くぞ!」
しっかり休んで準備も万端。ってことでやってきましたダンジョン。
誰でも入れる初心者用というだけあって穏やかな雰囲気が漂っている。武器なんかも配布されてるらしい。
「穏やかだね」
「本格的なダンジョンというよりはお試し、雰囲気を感じるのが目的だそうです」
「ほほ~」
そもそもダンジョンとは。
1つの世界が構築されている空間のこと。
この中にいる魔物は魔石が壊れるか絶命すると体が霧散する。
そしてランダムな確率でその体の一部をドロップする。
中は洞窟だったり構造物だったりで多種多様。明らかな人の手を感じるが世界のどこかにポッと湧いてくるらしい。
最深部には魔石があり、それがダンジョンの核なんだとか。
「その魔石を壊すことでそのダンジョンには魔物が湧かなくなり、やがては崩れて何もなくなるんです」
「「へ~」」
なるほどなあ。って、そのダンジョン内をゆっくり歩きながら解説されても。
本当にただの見学会みたいだな。魔物もスライムしかいないぞ。
「このダンジョンも生成されたものなんですよ」
「え、そうなの!? てっきりチュートリアル用に作ったものかと……」
「ダンジョンは人の血肉を栄養としています。我々を誘って殺し、そこで得た栄養を使ってさらに人間を取り込もうとする」
まるでミミックだな。
でも魔石も手に入るしドロップ素材も手に入るって考えたら、完全に攻略出来たら資源の山だよな。
わざわざ最奥の魔石を壊さないでも良さそうだけど。
「ダンジョンの中で死んだ人間だけではダンジョンも栄養を満足に取り込めません。そこでダンジョンはどう動くか……周囲の大地から栄養を吸い取るのです」
「それじゃ、長時間ダンジョンがあるとその周りの大地が死んじゃうのか」
「その通り。ですからダンジョンは見つけ次第クリアすることが冒険者の決まりです」
流石に無から有を生み出してるわけじゃなかったんだな。
にしても、ダンジョンとやらはどうやってこの人間と同じ構造物の仕組みを知ったんだろうか。……ほんのりと後ろに神の気配を感じるな。
「ダンジョンの最奥にはたいてい強い魔物がいます。広い空間でじっと我々を待ち構える、いわゆるボスという奴です」
「……あれがそうなの?」
出てきたのはちょっと大きめのスライム。
当然ワンパンで終わり。
え、本当に終わり?
「おめでとうございます! これでダンジョンクリアです!」
…………ええ~。
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