迷宮都市 エウィニバル
エモルドゥにお使いをお願いして、僕らは街を出た。
あの洞窟での出来事は腕輪のことだけ隠して全部報告した。討伐はできたから問題ないでしょ。
男爵さんはすごい感謝してくれて、沢山お金をくれた。
もともと十分な旅費はあったけどこれで少しくらいなら遊んでも平気だ。やったぜ。
「見えてきましたよ」
「おおー、おっきい街だ」
エモルドゥと合流するのに選んだのは、王都を囲むように点在する大きな都市の1つ、エウィニバル。
大小様々な『ダンジョン』が存在する迷宮都市。
この国のみならず世界中から冒険者が集まってくる冒険者の街でもある。
王都に向かうためにはここや他の大都市を通る必要がある。何かあった時は防壁の役割も担ってる、とか。
「城門のところで宿の人が迎えに来てくれるそうです」
「手厚いね」
「ここは迷いやすい街ですからね。お二人も出かけるときはお気を付けください」
「うん、ありがと」
あの男爵さんの紹介なだけあって、御者の人は親切でとても良かった。
道中も会話が盛り上がって退屈しなかったし。
「着いた~」
「エクスウェル様でしょうか」
「はい。ヒカル・エクスウェルです」
「お待ちしておりました。ご案内します」
疑ってたわけじゃないけど本当に迎えに来てくれた。
しかも馬車に刻まれてる家紋をしっかり判別してる。凄いな。
……と思ったら止まってる馬車のほとんどが貴族のものだ。きっと僕と同じ目的の人たちなんだろう。
王都へ向かう道中に学園で使うのに必要な道具なんかを集める。
冒険者が集まるこの都市なら武器防具はここで揃えるのがいいんだろう。
僕は領都にある鍛冶屋でオーダーメイドのものを作って貰ったから特に買わないけど。
「ヒカル様が滞在する間、身の回りのことを手伝わせていただきますリットネグと申します」
「よろしくリットネグさん。さっそく1ついいかな」
「なんなりと」
「僕もダンジョンに行ける?」
迷宮都市なんて、観光しないわけにはいかないでしょ。
ダンジョンに潜った経験もないしちょっと挑戦してみたい。みたいけど、こういうのって大体冒険者じゃないとダメだったりする。
僕は学園を卒業するまで冒険者になるのはダメって言われてるから難しいかも。
「……もっとも簡単なダンジョンの第五階層までであれば、だれでも入れますよ」
「やった。それじゃ荷物を置いたら早速行こう!」
「はしゃぎすぎですよヒカル様。到着したばかりなんだし休みを挟んだ方がいいです」
むう。エルピスが言うことも一理ある。
今日はゆっくり休むかぁ。
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