ご対面
「いよし」
「…………」
まずは挨拶がてらね。
まだ調整が甘くて油断すると焼け野原だけど、洞窟の中に打てばその心配もない。
おかげで魔力の反応はほとんど消えた。……初級とはいえボスらしき個体は生き残ってる。しぶといね。
とにかく、これで雑魚は倒せたし後はボスのところまで歩いていくだけだ。
魔力をソナーみたいに使えば迷わずに行けるでしょ。
「よし、行こうか」
「……こえー俺の主」
「エルピス、早く行きますよ」
エルピスは魔法が苦手らしいから余計にそう見えるのかもね。
リナ先生曰く、魔法を使うときの魔力量は足し算の要領なんだとか。つぎ込めばつぎ込むほど威力は上がるけど、ちょっと効率が悪い。
中級や上級の魔法は初級の魔法に様々な変化を加えて威力を増幅させる、つまり掛け算。少ない魔力で大きな威力を発揮できるという訳だ。
初級魔法の水球が魔力を10消費して威力も10とすると、中級魔法の水弾は同じ消費量で威力が20になる。
詠唱がこの威力を増幅させる役割を担ってるんだとか。
かといって詠唱を破棄したり簡略化しても別に威力が落ちるわけじゃない。ちょっと不思議。
ここら辺の理論は学園か魔塔に行けは詳しく学べるって言ってた。
お姉ちゃんは今魔塔にいるらしいし、調べてみるのもありだな。
っと、考えてる間につきましたよっと。
「がるるるるるるるるるるる……」
「やあこんにちは。さっそくで悪いけど倒させてもらうよ」
「……ヒカル様」
あれ、二人ともどうしたの。
なんだか苦しそうだけど……ってああ、なるほど。
これがあの人の言ってた魔力が必要ってことか。
鍛えてるエモルドゥや人より魔力が多いエルピスですら動けないほどとは。
「こりゃあ誰も討伐できないわけだ」
「通常のゴブリンキングですらB等級に分類されるほどの強さです。そこにこの環境が加われば、最強と言って差し支えないでしょう」
「なるほどね。……もしかしてここがあんまり焦げ臭くないのもそれが原因?」
「おそらくは。原理は分かりませんがこの空間は魔力がうまく操作できません。途中で魔法が無効化された可能性はあります」
ふむ。
魔法は使えない、というか効かないと。
……一応試してみるか。
「『かくも猛々しき火の精霊よ 我が叫びに参じその魂を燃やしたまへ』【火球】」
うん、しっかり無効化されてるね。
発動した瞬間に霧散した。魔力が消えてる、のか?
これは楽しめそうだ。
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