初めての魔物と奪う
「こちらになります」
案内されたのは山奥にある小屋。
随分オンボロ、のように見えるけどしっかり手入れされてる。
中にいるのは……2人かな。
「おじゃましまーす」
「よく来てくれた」
「……貴族の人ですか?」
僕を出迎えてくれたのは40代くらいの男性。
シワだったり頭だったり……色々と苦労してそうな見た目だ。
整った身なりと、あとは勘だけどこの人はきっと貴族。
でも貴族ならなんでこんな辺鄙なところにいるんだろう?
「……一応そうだ。男爵位を賜っている」
「そうでしたか。私はエクスウェル伯爵家が次男、ヒカル・エクスウェルと申します」
「そうか、君があの」
え、何その言い方。
なんか僕の名前が他の人に知られてるのって物凄い怖いんだけど。
あの、って何あのって!
「悩みの種だった盗賊団を捕縛したと言うから、どんな凄腕冒険者かと思ったら」
「そ、その……あまり期待されるのは、ちょっと」
「謙遜はいい。私が今求めてるのは膨大な魔力だ」
ほほう。
……まぁ聞くだけ聞いてみますか、話。
「――……と、纏めるとそういう訳だ」
「一定以上魔力を持ってないと動くことすらままならないところで好き放題してるゴブリンキングがいるから倒して欲しい、と」
一言でまとめられた。
なるほどなぁ。
魔物の討伐依頼。しかも強そうなやつ。
更にさらに特殊な場所と来た。
「分かりました。その代わり……」
■ロ■ロ■
と、言うことでやって来ました。
見た感じは普通のほら穴。ちょっと刺激的な匂いがするくらい。
「うへぇクッサ」
「ゴブリンの巣で間違いないようですね」
「パッと見じゃ分からないもんだね」
エルピスもエモルドゥもとても優秀なので今回の討伐に着いてきてもらった。
ラファンなんかの魔物討伐はしたことあるけど、こういうシチュエーションは初めてだし、不安だから念の為ね。
正直、それと同じくらいワクワクもしてる。
「……ふむ」
こりゃまた、すんごいね。
アリの巣観察とかした事ないけど、多分こんな感じ。
狭い通路といくつかの部屋。その至る所にいるゴブリン。一つだけ強い光があるから、ボスは多分それ。
……さーてと、どうするか。
ここまで広いと面倒なんだよなぁ。
それじゃあ取り敢えず。
「『かくも猛々しき火の精霊よ 我が叫びに参じその魂を燃やしたまへ』【火球】」
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