出発
「…………」
集、中……。
よし、行けてる。大丈夫だ。
やっぱり僕の努力は無駄じゃなかった。この6年間、正直意味があるのか分からないで少し不安だったんだ。
でも魔力がまた扱えるようになって、前より難しいはずの操作が出来ているのは成長だろう。
まぁ、ただの水球でここまで集中しなきゃ維持出来ないのは、まだまだ改善の余地ありだけども。
あの日からはや1週間。
体は完全に元通りになった。素の肉体も、沢山ある魔力も全て思いのまま。
後は慣れて本当に思いのまま操れたら最高なんだけど、まだ振り回されてる。
「ヒカル様、そろそろ」
「今行く」
今日から僕は王都にある学園に行く。そこで勉強したら1人前って訳じゃないけど、ただ親の名を借りる子供から家名を背負った子息令嬢になる。
ようは最低限のマナーは叩き込んだからそれ相応の立場と責任をあげるよって話だ。
そんなもの要らないってのが本音だけど、お兄ちゃんもお姉ちゃんも通ってた学校だし、なにより王都にいればお兄ちゃんと会える可能性が高い。
それなら行くしかない。
「なっはっは。ヒカル様もついに学生ですか」
「長いような短いような」
「王都でも頑張ってくださいね!」
家の皆とお別れの挨拶。
この12年のほとんどを一緒に過ごした人達だ。
暫く会えないと思うと少し泣きそう。今生の別れって訳でも無いのは分かってるんだけども。
「ヒカル様」
「ニャシー……」
「本当に、よくここまで元気に育ってくれました」
「ニャシーのおかげだよ。本当にありがとう」
あの日の傷が響いて、ニャシーは今も一日の半分を寝て過ごしている。
お母さんと仲が良いことや僕たち3人の乳母だったことでまだこの家にいられるけど、他の家なら追い出されるかもしれないくらいの重症だ。
この傷は……僕のせいで。
「ヒカル様。これから、様々な苦労があると思います。でも、なにがあっても我々はヒカル様の味方です」
「……うん」
「我々使用人一同、ヒカル様のお帰りをずっとお待ちしております」
あーもうやめてよ。
そんなことされたら泣きそうになっちゃう。
「向こうにはウィズも、パパもいるから。何かあったら頼ること」
「うん」
「嫌なことがあったら帰ってきてもいいから。……ただし、誰かとケンカはしないように」
「そんなこと……しない、よ?」
前科があるから自信を持って否定は出来ない。
「元気でね」
「うん。……行ってきます!」
さ、あんまりここにいると泣いちゃいそうだから早く行こう。
いざ、お兄ちゃんがいる王都へ! ……じゃなくて学園がある王都へ!
この章では、転生系なろうにおいて書きやすいし書きたいから書かれているけど読み手側はほとんど無駄に思ってそうな『学園パート』です
別れがあれば出会いがあり、中学生くらいまで育ったヒカルの……まぁなんか色々を書いていく予定ですのでお付き合い頂ければと
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