戻ってきた力
おはよう。
力、戻ったぜ!
という訳でさぁ困った。
今僕の目の前には大量の木製片手剣……だったものが積まれている。
これぜーんぶ、僕が壊しちゃった。テヘ。
いや、あの……どうしよ。
「まいったな」
「それはこっちのセリフですよ」
ヒナタと出会った日からもうすぐ1週間。
彼女が言っていた通り、僕の体は徐々に変化していった。
魔力に関しては6年間サボらなかったことが幸いしてすぐに扱えるようになったし量も増えた。コントロールも昔と同じかそれよりいい精度で出来るようになっている。
問題は素の肉体の方だ。
こっちは前世から12年ぶりに味わう感覚。それもまだ子供らしい肉体で。
起き上がって暫くは足が痺れた人みたいに変な歩き方じゃないと家のもの全てを壊すところだった。
「その馬鹿力、見たところ魔力とは無縁のようですが」
「うん。身体強化も何もしてないよ」
何もしてなくてこの威力なんですよグラルドさんや。
だからかるーく、本当にかるーく素振りでもしようかなって木剣を握るだけでこうなってるんです。
弱く持とうとしたら今度は持てない。ちゃんと持つと壊れる。……どうすればいいんだコレ。
前世の僕はようこんな肉体で過ごしてたな。12年以上も前の感覚なんてとうに忘れちゃったよ。
「一応、鉄製の素振り用片手剣もありますが……」
鉄製となると、今度は別の心配が出てくる。
壊れなかったとして、もし万が一その鉄剣が僕の手からすっぼ抜けたら。
すっぽ抜けなかったとして、鉄の重みで素振りをしたら。
…………めちゃくちゃな被害が出ることは容易に想像できる。
これは、しばらくは鍛錬禁止かなぁ。
力が戻ってきたのは嬉しいけど、ちょっとこれは困るよヒナタさん。
「それで、誰にも何も言わないで魔法を使った結果がコレですか」
「…………ハイ」
怒られた。
しっかり怒られた。
鍛錬が出来ないなら魔法を使おうってなるのは当然なわけで。
久しぶりだし念の為にと初級も初級、懐かしの水球を発動したんです。
ま、確かに予想はしてました。この6年間ちゃんと魔力操作をして、呼吸も作って魔力は増えてるだろうと。
でもここまで制御が効かないのは予想外。
慌てて空に放り投げたけど、あまりにも広かったんでほとんど意味はなく。
どうにか細かくしたから物が壊れる被害はなかったけど、嵐の後の様に家の周りはグチャグチャになってしまった。
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