一旦仲直りの握手
「失礼します」
案内されたのは至って普通の部屋。
机と椅子と大量の資料。会議室とかそんな感じかな。
パスター司祭をはじめとした位の高い人達が勢揃いしている。
みんな表情が暗いぞ。ほら、笑って笑って。
「……先ずは、偉大なる存在に祝福とご挨拶を。そして、不敬な我らの行いに謝罪を」
「…………えっと、一から説明して貰えます?」
話をまとめると、僕の意識が現実世界に戻ってきた時、ヒナタ教のお偉いさんが天啓を授かったと。
ヒナタが気を使ってくれたのかも。
それで本部からこの神殿に問い合わせがあり、嘘をつける訳もなく白状した、との事。
黒髪である僕は忌むべきものだから排除しよう、と考えた。随分あっさり認めたね。
まぁ誤魔化したところで何も出来ないけど。
「我らが主の声を賜った貴方様は偉大なる御方でございます。その命を奪おうなどと……」
「あの程度で死ぬほど弱くないので大丈夫です」
こちとら理不尽なことで死なないために鍛えてるんじゃ。あんな中途半端な暗殺者ごときに殺られる雑魚じゃあ無い。
僕の努力の日々を舐めないでいただきたい。
そんな、ポカンとした顔で見ないでよ。
「では、僕はこれで失礼します。これからはお互いに位置関係を築けることを祈っています」
もう変なことはするなよ、と釘を刺しとけば大丈夫だろう。少なくともこの人たちは黒髪を忌むなんてことはしないはず。
僕の力も戻ってきたし、そろそろ我が家に帰りますかね。
「エモルドゥ」
「はい。馬車の用意は整っています」
「分かった。それじゃ帰ろう」
帰り際になにか喋ってたけど、僕には聞こえない。
聖者でも無いし聖痕なんて無い。そんな面倒事に関わるのはゴメンだ。
■ロ■ロ■
「ただいま帰りました父上」
「……うむ。ご苦労だったな」
僕ももう12歳。日本じゃ中学生になる年齢ってことで、お父さんのことは父上と呼んでいる。
最近呼び始めたからまだお父さんは慣れないらしく、呼ぶ度に微妙な顔をしてる。
……たまにはお父さんって呼んであげるか。
「エモルドゥからも報告があったが、彼らには何もしないと?」
「はい。まだ確実なこととは言えないですけど、僕も得るものがあったので」
「……そうか。ならばこの件はこれで終わりだな」
本当に魔力が戻ってきたのかは、数日経てば分かるだろう。
戻っていれば良し。戻っていなくても……正直どうだっていいな。
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