パワーのご返却
『我々日本人、異世界からやってきた人間はこの世界において様々な意味を持ちます。ですがそれら全てをお伝えすることは出来ません』
「うん。正直そんな興味無いし別にいいや」
『少しは興味持ってくださいよ。もう。……ごほん。それでですね、君にはお渡ししたいものがあるんです』
「……それは?」
ヒナタが両手で差し出したのは……光?
輪郭があるようで、空気のように見えなくなって、強烈な存在感を放ったと思ったらすごく小さくなって。
見ている間にも変化し続ける、名称しがたい何か。
『これは君の力です』
「僕の……力」
『もうチェインちゃんとは会いましたよね。その時に色々話しませんでしたか?』
あぁー、あったね。
僕の力を封印する代わりに答えを教えてくれるとかなんとか。
それがこれってことか。
『彼女は恥ずかしがり屋さんなところがありますから、言葉足らずだったかもしれませんけど』
「足らないどころじゃなかったけどね。いきなり封印されちゃうし」
『その力の返却。……そして、もう1つの力もお渡しします』
もう1つとは。
封印されて使えなくなったのは魔力だけのはず。それ以外になんかあったっけ。
『これは前世の君の力。君本来の“強さ”です』
「僕本来の強さ。ってことは昔と同じような感覚で体が使えるの?」
『概ねはそうなります。君が死んだ時と今の肉体による齟齬や違和感、そして何より魔力による影響が考えれますが、数日で慣れるでしょう』
「ほぉー」
これは嬉しい報せだ。
前世の僕と同じ力が出せるなら、魔力がなくたってボスウサギなら倒せる。
そこに今までの魔力が戻ってくるんだ。
我ながら超絶パワーアップだな。
『力を取り戻した直後は体が変化に追いつかず倒れると思います。その間に慣れてください。あと、何をするにも慎重に』
「……そんなにヤバい?」
『強くなった肉体に負荷はありません。ただし、その力の余波は近しい人に襲い掛かります』
僕の力で周りの人が傷付くのかもしれないってことか。
十分に注意しないと。
『そろそろお別れの時間です。……本当はもっと色々伝えるべきことがあるんですが』
「もう会えないの?」
『会えないことも無いですが…………もし、また私に会いたいと思ってくれたら、大龍山に来て下さい』
「ん、分かった。きっと会いに行くよ」
『では……コホン。さぁ行きなさい仔羊よ。その歩みの先が明るいことを祈っています』
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