正体明かしたり
「ヒカル様っ!」
「お、エルピス」
最初に部屋に来たのはエルピス。与えられた部屋はそこそこ遠かったはずだけど真っ先に駆けつけてくれたんだ。
なんか嬉しいね。
エモルドゥは多分ほかの処理をしてるはずだから、任せておこう。
さて、多分そろそろやってくるんじゃないかな。
「何かすごい物音がしましたが……」
「こんばんはパスター司祭」
「こ、これは一体」
数人の騎士を引き連れてパスター司祭がやってきた。
一瞬とはいえあんな顔しちゃダメでしょ。分かりやすいなぁ。
騎士たちも動揺してる。
こりゃ真っ黒だ。
「どうやら僕の命を狙った暗殺者のようです。偶然が重なってどうにかなりましたが」
「そうでしたか。ご無事で何よりです」
「はい。ありがとうございます」
偶然がいくら重なってもこうはならない。でもそれをつついたところでボロが出るのは僕らじゃない。
この場は円満に収めようじゃないか。互いのためにね。
「本当に来ましたね」
「2人っきりだしタメ口でいいよ。監視も居なくなったから」
エルピスは僕の付き人であり、友人だ。
立場上そう砕けた口調は使えないけど、それはあくまで周りに立場を示すため。
こうやって周りに人がいなければ僕らは幼馴染のような親友のような関係になる。
「マジで襲われるとは思わなかったぜ」
「正直僕も驚いてるよ。領主の息子殺そうとするかね普通」
「それだけ熱心な信徒なんだろ。迷惑な話だけどさ」
僕がいる神殿が信仰しているのは西側で主流となっているヒナタ教。
随分と耳馴染みのいいこの宗教は黒を不吉な色としている。
“黒髪は厄災を招く”。昔に聞いたセリフの背景が見えてくるってものだ。
その事実を承知でわざわざこの神殿に顔を出したのはお父……父上の意向だった。
非公式ではあるが、普及度合いからしてヒナタ教はこの国の国教と言って差し支えない。それほどの規模の宗教に対して反抗的な態度をとることは当然勧められないこと。
更に言えば、黒髪に対して排他的な以外はマトモな宗教であり、洗礼には確かに力がある。
だから何事も無く行事を終わらせ、民衆監視の元ちゃんと洗礼を受けて僕の体を治せないか試すためにわざわざ来たのだ。
「取り敢えず、明日の洗礼は受けることが出来そうだ。そのあともまだ狙ってくるようなら……父上に報告しないとね」
明日も無事で過ごせるといいな。
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