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12歳の節目



「ヒカル様、お時間です」

「うん。今行く」


あれから6年。

大きな事件も無く、かなり平和な日々だった。

騎士団に行ったお兄ちゃんは若いながらに大活躍しているそうだ。

お兄ちゃんの活躍が聞けるのは嬉しい。……全然帰って来ないのは嫌だけど。

お姉ちゃんも魔法科での成績を認められて今は魔塔という場所で頑張っているらしい。これまで以上に魔法に専念できるって喜んでたな。


「それじゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃい、ヒカル」


今日は12年目の新年。

この国では皆の誕生日だ。6歳の節目に続き、12歳は色々な意味を持つ。

街の子供たちは大人と同じように働けるようになる歳だし、貴族の子供たちは義務として王都にある学園に入る。

そして、子供から大人の仲間入りということで神殿にお祈りを捧げる行事がある。

今僕が向かってるのはその行事のため。

領主の息子として一番最初に洗礼を受けるらしい。

かなり昔の記録ではこの洗礼を受けることで魔法の力に目覚めるんだとか。

洗礼で再び魔法が使えるようになること。それを皆は待ち望んでくれている。

僕も少し期待している。苦労しないで元通りになるなら御の字だし。


「ヒカル様、神殿に到着しました」

「ありがと」


街の西側、大通りから少し離れた場所に立っている神殿。

所々老朽化の波を感じるけど、良く手入れされている。

豪華絢爛とは違う、温かみのある建物だ。


「こんにちは」

「おぉ、よくぞおいでくださいました」

「こちらこそ。お招き、ありがとうございます」


入り口で僕たちを出迎えてくれたのはこの神殿の管理者、パスター司祭。

明日から始まる行事に向けて今日はこの人のお世話になる。


「ではご案内します」


パスター司祭の説明をおさらいすると、とにかくここで修行僧のように明日まで過ごせばいいらしい。

分厚い教典に目を通してお祈りをして、質素な食事を頂いて身を清める。そして教典を読んでお祈りをする。

教典は何も、全部覚えろって訳じゃなくて、目を通すことが目的。

この本は原本のレプリカで、原本ほどでは無いけど聖なる力が宿っている。その片鱗に触れることで神と近くなれば繋がりが持てる、って話。


「従者のお2人には別室で過ごして頂きます。ご安心を。この聖なる神殿に入る不届き者などおりません。外から襲われることはありませんよ」


と、言う訳で今日は1日の大半を1人で過ごした。

そして夜。

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