嫌な終わり方
「グルルゥ……」
「……ニャシー?」
返事は無い。
僕に覆い被さるようにしてぐったりと倒れている。
咄嗟に受け止めようとして少し動いた右手から感じる温もりは恐らく……血。
ヤツはもう瀕死。死ぬ前の抵抗は僕であれば軽傷で済んだ。
でもニャシーは僕を庇って重傷を負った。
僕のせいで……。
「ふっ……ふ、ふ……」
呼吸が浅くなる。
心臓のドキドキが止まらない。なんで。
大丈夫なはずだ。まだ助かる。なのになんでこんなに怖いんだ。
「グル、グラァラァ!」
「黙れ」
今お前に構ってる暇はない。
無詠唱の水槍で倒れる様なヤツに。それほど弱らせていたのに。
僕のトドメが甘かったから……。ニャシーが。
「ヒカル様!」
ようやく助けが来た。
もう安心だ。なのに何故だろうか、涙が止まらない。
■ロ■ロ■
「…………ここは」
見慣れない天井。
でもこの雰囲気は知っている。
僕の家にある客人用の寝室。多分、入口から近いから運び込まれたのかな。
「っヒカル様! お目覚めになられましたか」
「うん。おはよう」
このメイドさんは……確かフィエルだっけ。
ニャシーの手伝いをしていたのを覚えている。
「ニャシー……ニャシーは?」
「ニャシー様は……その」
「彼女なら生きてる。無事とは言えんがな」
扉を乱暴に開けて入ってきたのはグラルド。
表情は明るくない。言葉からしても、ニャシーはかなり重傷なんだろう。
「そんなことより、ヒカル様が無事で良かった。あの時起きた森の異変は現在調査中だ。突然の事とはいえ、主であるヒカル様を危険に晒した責任は俺にある。申し訳ない」
「……そんなこと?」
あの時森に異変があったと。
それが原因でグラルドさんたちは僕のことを助けられなかった。それはいい。
でも、ニャシーが僕のせいで傷ついたのをそんなことだって?
「……落ち着けヒカル様。気持ちは分かる、なんて言わんが魔力を乱すな」
「…………うん。ごめん、少し取り乱した」
「確かに彼女は重症だ。だがこのまま行けば回復するって話だ。死ぬことは無いから安心しろ」
「……うん」
そう、か。死んではいないんだ。
ニャシーは生きている。それが分かっただけで一安心。
「お前さんも十分重症なんだ、今はしっかり休め」
「うん。……ありがとうグラルド」
「俺はお礼を言われる立場じゃねぇよ」
安心したら眠気が。
言葉に甘えて今日はゆっくり寝よう。
おやすみ。
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