本気の最終ラウンド
「……なんだ、コレ」
「グルルルルル」
ヤツに掛かってたモヤが晴れて、ハッキリとその姿が視認できるようになった。
大まかな形からして熊っぽいなと想像してたけど……これはまた。
随分と変わった姿の熊だな。
巨大な体を支える太い足、一振で大人も吹き飛ばせそうなくらい巨大な腕。
そこまではいい。
その腕と足が繋がってるのは胴体。胴体のはずなんだけどそこには目も鼻も口もある。
しかも、福笑いみたいにバラバラな場所に配置されている。
本来顔があるはずの場所には耳が着いているだけであとはのっぺらぼう。
胴体の右肩辺りと左脇腹辺りにある目はしっかり僕を捉えていて、鎖骨の辺にある鼻はふがふがと匂いを嗅いでいる。
ただの飾りではなさそう。
「……バケモンだね」
「グルルルゥグルゥウァ!」
図太い腕にはやっぱり鋭い爪がある。斬撃が飛んできたのもこの爪が原因だろう。
そして僕が目だと思って潰した場所は別の器官らしい。
ゲームのボスの弱点みたいな赤い丸がある。目じゃないならなんなんだろう?
何はともあれ、目が見えてるんなら話が変わる。
ここでコイツを弱らせるなり倒すなりしないとダメだ。かなり時間は稼いでるからそろそろ助けが来てもいい頃だろうし。
正直、コイツ相手に魔力切れの可能性がある手段は怖いけど、現状はそれが一番いい方法だと思う。
「それじゃ、最終ラウンドと行きますか」
「グルルゥ……」
あの足じゃ急接近は出来ない。
なら身体強化を防御寄りにしなくていいから扱える魔力は増える。
しっかり動きを読んで最低限の身体強化で躱す。攻撃を喰らわないことを大前提に動こう。
「『かくも美しき水の精霊よ 我が歌を聴きたまへ』【水の加護】」
「グラァ!」
「【水刃】!」
初級魔法の中でも1番難しい魔法、水の加護。
発動に必要な魔力量も凄まじいがその分恩恵はでかい。
魔法の発動に必要な詠唱を短縮出来る。本来ならその分威力は落ちるけど、このモードは込めた魔力によって威力が変わる。
この魔法に今僕が持ってる半分の魔力を注いだ。
威力は変わらないどころか今の方が強いだろう。
問題は魔法を1つ使う度の魔力消費が流石に多いこと。バカスカ連発したら僕の魔力が切れる。
それまでに目の前の強敵を倒さないと行けない。
「さぁ、始めようか」
水の加護は厳密に言うと中級魔法です
初級魔法の奥義的扱いですが、実際は中級の中でも割と難しい部類
ですがヒカルは持ち前の膨大な魔力量でほぼ無理やりこの魔法を覚えました
ヒカルが持っている魔力量とヒカルの姉であるウィズ、先生であるリナの教育の賜物と言えます
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