やり直しの第3ラウンド
「ふぅ」
「…………」
目を潰してからヤツに動きはない。
ここまで静かだと何かを企んでいるようで怖いけど、魔力視でも特に動きは見られない。
水槍で与えた傷はもう治ってる。でも目の光は消えているから水矢は効いているようだ。
目なんて弱点になりやすい部分だし、効いてなきゃ困る。
視界は潰してるんだ。こっちのことを察知できないはず。はずなのに……。
僕が左右に動いたら必ずその後を追って、僕を正面に捉えてくる。
あの動きは明らかに見えている。
「何もしてこないなら1番嬉しいんだけど」
下手に泥を解除して襲いかかられても困る。
まだ魔力はあるから僕が離れない限りヤツの身動きは取れないまま。
このままなら僕が有利なはずなのに……なんだろうこの不安感。嫌な予感がする。
「グルルルルルル……」
「……」
動いた。
ゆっくり体を動かしただけだけど、今まで静止していたのに動き出したとなると、何かある可能性がある。
警戒しておいて損は無い。
「グルゥ……」
随分余裕そうな声だ。
うん? 足動かしても出られない……違う。なんで足が動かせ――
「うぐぁっ」
「グリャア!」
っやられた!
どうやったか分からないけど、自分の足を切断して無理やり泥から抜けやがった!
動いてなかったのは切断してたからか? でも動かないでどうやって。
いや、今はそんなことどうでもいい。
「第3ラウンド開始ってところかな……」
「グルルルルルルゥ」
ヤツは太もも辺りを切断している。回復する様子は無いから前ほどの機動力は無いはず。
だったら僕の攻撃も当たる。
逃げることも出来そうだけど、ヤツが動ける状態で逃げたらニャシーに危険が及ぶかもしれない。
動けない程度には弱らせておきたい。
「グラァ!」
「ほっ。『かくも美しき水の精霊よ 我が歌に嘆き涙を零したまへ』【水槍】!」
やっぱりヤツは僕のことが見えている。
正確に僕のいる場所を攻撃してくる。でも僕の魔法は当たってるから目が見えないのもそうなんだろう。
となると、視界以外の方法で外を認識してるってことだ。
その方法を見破らないと、僕の方が不利だな。
「グウゥゥゥゥゥゥ」
「?」
「グアァアァアァア……」
なんだ。
突然苦しみだしたぞ。
あーもうやだ。この感じ絶対弱ってるんじゃなくて形態変化だよ。
これ以上パワーアップするとかやめて欲しいんだけど。
「グゥォォォォォォォォォ!」
「うわっ」
よく分からない動きに、威圧的な咆哮。
それが終わったあと僕の目の前にいたのは、なんとも奇妙な魔物だった。
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