白熱の第2ラウンド
「ふー……」
「グルルルルルルルルル……」
ヤツは身動きが取れない。
なんどか抜けようとしてたけど今は諦めて応戦の構えだ。
僕が今すべきことは休息。ずっと魔法を使っている状態だから回復は見込めないけど、いざって時に動けるように何もしないのが1番だ。
今の僕じゃ十中八九ヤツには勝てない。
他の魔物が現れたり、ヤツが行動を起こすことにだけ警戒していれば大丈夫だ。
言ってるそばから何かしようとしてる。
「グルゥ……グラァ!」
「!?」
危なっ。
ホント、警戒しておいて良かった。
なんだ今の。飛び道具?
いや、魔力の気配を感じたから魔法を使ったのか。
「グラァ! グラァ!」
どうやら爪? のようなものに魔力を込めて斬撃として飛ばしているらしい。
強度がどれ位か分からないけど、後ろの木が綺麗に真っ二つになってるから触らない方がいいだろう。ヤツの魔力ら何か得体の知らない嫌な気配がする。
さて、身動きを封じて楽なフェーズになったと思ってたんだけど……こう反撃に出られると僕も応戦しない訳には行かない。
……まだ魔力には余裕がある。
「仕方ない。付き合ってあげる」
「グルゥオアアア!!」
気合いを入れたのはいいとして、問題はヤツに僕の魔法が通じるかどうかだ。
水球の圧縮に耐えていた様子を見るに、相当頑張らないと傷1つつかない可能性がある。
両足が沼に沈んでるとはいえ、腕をブン回して斬撃を飛ばしてくるような相手に当たる速度と威力を両立するのは難しい。
そうなると。
動けないなら避けることも出来ないくらい大きくて威力が凄まじい魔法を喰らわす。これだな。
「『かくも美しき水の精霊よ 我が歌に嘆き涙を零したまへ』【水槍】!」
初級魔法の中で最も攻撃力の高い魔法、水槍。
今の僕が同時に展開できるのは10個。それを頭上から雨のように降らせる。
一つ一つの大きさは僕より太い。足を封じられていちゃ避けることは不可能だ。
「はぁっ! 『かくも美しき水の精霊よ 我が歌を聞きその声音を走らせたまへ』【水矢】!」
「グルゥ……グラァアッアアアア」
よし、命中。
上から降る魔法でこっちへの警戒が薄くなったところで速度重視の水矢。これで赤黒く光る両目を潰した。
水槍のダメージもちゃんと入っている。第2ラウンドは僕の勝利だ。
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