接戦の第一ラウンド
百三十二話 接戦の第1ラウンド
「く……ぐぅ……」
「グルルルルル」
どれくらい時間が経っただろう。
1時間? 2時間? それとも……。ま、実際は5分も経ってないんだろうけど。
それくらい、目の前のヤツとの対決は激しい。
傍から見ると互いに立ち止まっているだけだけど、実際は押し押されの攻防戦。
僕が発動した水球をヤツの体を中心に圧縮させている。当然ヤツは反発。
魔法に対する抵抗力が高いのか、あれくらいの魔物は全員そうなのかは知らないけどめちゃくちゃ魔法を弾かれそうになる。
しかも、定期的に魔法を破ろうとしてくるからそれを防ぐのにも必死。
「ったく……そろそろ諦めてくれないかな」
「グルァル! グリャア!」
ヤツの真っ赤に光る眼は僕をじーっと見つめてる。
この視線が好意なら良かったんだけど。肌にひしひし感じるのは殺気。
僅かに制御を緩めようものなら僕へ飛びかかってくるだろう。
……にしても、ヤツの正体はなんなんだろう?
現れた時からそうだったんだけど、ヤツの輪郭はぼやけている。
正確にはヤツを視認してると目の内側にモヤがかかる感じ。そのおかげでハッキリと姿を認識出来ない。
圧縮を使って大まかな輪郭は見えてきているけど、分かるのは大きさくらいだ。
「ふぅ……」
そろそろ限界だ。
魔力量的にはまだ行けるけど、もう操作が覚束無い。
次大きく抵抗されたらそのまま弾かれるだろう。
今のままじゃ負ける。だったら……。
勝負に出るしかない。
「『かくも美しき水の精霊ならびにかくも堅き土の精霊よ 我が賛美歌に耳を傾けその滴で欠片を集めたまへ』」
「グルゥアアアアアア!!!」
「【土砂水没】!」
どうだ?
「グリャアアアア!」
「っよし」
水と土の魔法を組み合わせた土砂水没。
水を含ませた土をさらに柔らかくして一帯を底なし沼のようにする。弾かれる瞬間にこれまた広範囲で発動したからヤツは見事に引っかかった。
この泥には僕の魔力が含まれている。ヤツからすればただの泥よりも絡みついて動きにくいはずだ。
これでも突っ込んできたら詰みだったけど、ちゃんと動けないみたいだね。
それじゃこのまま逃げ……たかったんだけど。
ヤツの身動きを封じるためには泥の範囲内にずっと水を与え続けないと行けない。
その為には僕の体の一部が泥に触れている必要がある。つまり身動きは取れない。
「さ、第2ラウンド開始と行きますか」
「グルルルルルルルゥ……」
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