今生の別れでは無いんだけど
「本当に1人で行かれるのか」
「えぇ。今回はあくまで確認ですから人数は少ない方が良い」
後日、エルブロさんは魔獣討伐の確認とかなんかであの森に行くことになった。
最初は護衛を付けるとか隊を組むとか話があったんだけど結局1人で行くことになったみたいだ。
まぁ、この国最高峰の騎士団を束ねる団長さんに護衛やらは必要ないのは納得ではある。
「早ければ3日ほどで終わる。それまで家族の時間を大切に過ごしておけ」
「はい。お気遣い感謝します」
家族みんなでエルブロさんを見送って、残り少ないお兄ちゃんとの時間を過ごすことにした。
基本は普段と変わらない生活。普段通りに鍛錬したりして、夜はお兄ちゃんがいない間にどんなことがあったかを話してた。
お兄ちゃんはお兄ちゃんで中々刺激的な生活を送っているらしい。
学園での話やお友達のこと、一部の過激的な女子から追いかけ回されていることや騎士団の人達のこと。
それらを喋る時のお兄ちゃんが随分と楽しそうだから聞いてる僕まで嬉しくなっちゃう。
そんなこんな、楽しい話を聞いたり話してたりしたらあっという間に4日が過ぎた。
「では、我々はこれで失礼します」
「改めてお礼を。そして、息子をお願いします」
4日目に帰ってきたエルブロさんはまたお父さんと何かを話して、翌日には王都に帰ることになった。
これでお兄ちゃんとは暫く会えないことになる。
凄い寂しいけど、この3日間たっぷり話せたから平気だ。
「じゃあね、ヒカル」
「うん。頑張ってねお兄ちゃん」
泣き出しそうな僕もいるけど、もう泣かない。
泣いたところで何も変わらないことは分かってるし、そんなみっともない姿をお兄ちゃんには見せたくない。
お兄ちゃんにはお兄ちゃんの生活がある。王都での生活を楽しんで欲しいから僕はいい子でお見送りだ。
「お前なら大丈夫だ。頑張りなさい」
「はい、父上。母上も」
「応援してるわルーク」
お姉ちゃんが居ないのは残念、って思ったけどお姉ちゃんも王都にいるんだよな。よっぽど僕よりお兄ちゃんと会える。
ま、そんなこんなでお兄ちゃんとはしばらくお別れだ。
2人が乗った馬車を見えなくなるまで手を振って見送る。
もう……大丈夫、かな。
「……よく耐えたな」
やっぱり体はまだ子供みたいだ。
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