培った努力は突然に
寝返りを覚えて一週間ほど経った。
僕は自分の急成長に驚いていた。
あの日から僕はベビーベッドから解放された。
部屋からベビーベッドが無くなり、大きめの布団で過ごすようになった。
寝返りを打ったことで腕や足腰が前より使いやすくなっている。
という事で僕は今日も今日とて匍匐後進の真っ最中。
赤ちゃんの体は引くより押す力が強いので、最初は地面を押した後ろに下がる方が楽なのだ。
今日もいそいそと練習してるとお兄ちゃんの足音が聞こえてくる。
日に日に耳が良くなってる気がする。気の所為かな?
扉の前で待機しておく。
さぁ、いつでもウェルカムお兄ちゃん。
「Ü…Ủ~Ü∩±∦ШエЙ¤⊿!」
「あー、だぁー」
満面の笑みでお迎えしてあげたら抱っこされちゃった。
お兄ちゃんに抱っこされるのは初めてだから少し緊張するけど、いつもとはまた違った視点だからってスタップストップ、振り回すのは止めて!
ふぅ。乳母さんが居なかったらグロッキーになる所だった。
お兄ちゃんは反省はしてるけど、それより嬉しさが勝ってるのか口元はにやけている。
「うー、あぁー」
あれから毎日ボイストレーニングをしているので、大分声が出せるようになって来た。
と言っても単語らしきものは出せない。悲しいなぁ。
その前にまず聞き取れるようにならないとね。
お兄ちゃんがいる間は乳母さんもよく喋ってくれるからありがたい。
「∬±◇╬dubぃ¤¬₩ぇをrjno」
「Ü∦ϖ|Ы⊿Ш∩エ」
乳母さんはお兄ちゃんに何かを渡したようだ。
トリップしかけてるけど何を貰ったのか気になる。
近づいて膝あたりでうろちょろ。そうすれば意図を察してくれる。
お兄ちゃんは緊張した顔で僕を抱っこしてくれた。
いつもより体が硬い。何をそんなに緊張しているのだろう。
向きを変えて、あぐらで座るお兄ちゃんにもたれかかる感じになる。
おぉ……これはいい。お兄ちゃんの温もりが伝わってくる。
また若干の睡魔に襲われていると、目の前に大きな何かが現れた。
……なんだこれ。
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