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帰ってきたお兄ちゃん



「はぁ……」

「まだ落ち込んでるんですか」

「そりゃ落ち込むよ。お兄ちゃんと会えないなんて……」


お兄ちゃんの騎士団入りが正式に告知され、それに合わせて我が家ではお祝いの準備がされている。

一応、兵士と騎士では身分に差は無い。無いけど、一般的には騎士になることが誉とされている。

まぁこれに関してはお隣の大国になんたら騎士って言う特別凄い人達がいるらしいからそれの影響だろう。

そんな訳で騎士になれた、しかも王都で活躍するエリート騎士団に団長直々にスカウトされたとなればもう、それはそれは名誉なことだ。


「祝うべきことなんだけど……」


お兄ちゃんの実力が世に知れ渡ることは嬉しい。お兄ちゃんが出世したことは喜ぶべきだ。

でも一緒にいる時間が無くなってしまったことを嘆かないなんて出来ない。

お兄ちゃんのことになると体相応の幼い反応をしてしまうのは僕の悪い癖だ。


「はぁー……」

「ルーク様が帰ってくるまで2日もないんですよ。さっさと切り替えてくださいよ」

「……はぁー……」


エルピスには悪いけど、こればっかりは無理だ。

学園から帰ってくればお兄ちゃんは次期領主としてお父さんの元で働くものだとばっかり。

お兄ちゃんの所属することになる青旗騎士団は王都が管轄。滅多なことが無い限りはこの家に帰ってこないだろう。

あぁ……嫌だなぁ。


「ふむ……ではヒカル様はそのみっともない姿をお兄様に見られてもいいと。兄が居ないとぐーたらしている情けない弟でいいと言う訳ですね?」

「さ、僕もなにか手伝わないと!」


お兄ちゃんはもうすぐ帰ってくるんだ。

立派になった姿を見せないと!


「凄いっすね」

「分かれば扱い易くて楽ですね我々の主は」


付き人からの視線が痛いけど無視無視。さ、お兄ちゃんを出迎える準備をしなきゃね!


■ロ■ロ■


「おかえりお兄ちゃん!」

「ヒカル! ただいま。大きくなったね」


あぁ、この体。この匂い。

この優しい声は間違いなくお兄ちゃんだ。

久しぶりに会えたなぁ。嬉しい。嬉しいんだけど……。


「なんでいるの」

「来ちゃダメだったか?」


何故か、本当に何故かあの時の団長さんまで来てる。

騎士団に入る前の帰省じゃないの? なんで団長さんまで来てるのさ。


「ま、色々重なったんでな」

「ふーん」

「興味無さすぎだろオマエ」


そりゃ、団長さんはお兄ちゃんを騎士団に連れて行く人だから。

心象は悪いよね。

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