ひたすら実戦あるのみ
「『かくも美しき水の精霊よ 我が声に怒りその滴で切り裂きたまへ』【水刃】!」
「【炎璧】」
「それならっ」
今日も今日とて魔法の特訓。
実戦形式にも随分慣れて、いい感じの戦いを繰り広げられている。
僕は有り余る魔力をふんだんに使ってとにかく数を。リナ先生は緻密なコントロールでそれを全て捌く。
それどころか見えにくいところから魔法を打ってくるから油断ならない。
「『かくも美しき水の精霊よ 我が歌に答えその滴を零したまへ』『かくも楽しき風の精霊よ 我が琴に合わせその声を轟かせたまへ』【水球】っと、【弱回転】!」
水と風のコンボ!
僕の十八番になりつつある水球の分裂1000個を吹き荒れる風に混ぜて擬似的な嵐を巻き起こすオリジナル技。
炎璧は分厚くて堅い。だから水だけじゃなくて風も使うことでどうにか壊すのだ。
それに、風が吹いていれば蒸発した時の煙で視界が遮られることもない。
ってあれ?
「異なる属性を組み合わせて魔法を使うことは素晴らしい。風を送ることで自らの視界も確保していましたし」
「いつの間にっ!」
「ですが炎璧を自分の周りに張ったと勘違いして火力を集中させたのは間違いでしたね。デコイの可能性は常に頭に入れておきましょう。さもないと……」
「は、はは……」
「こうなりますよ」
「『かくも美しきみずの』っ」
もっと魔法を早く使えるようになろう。と僕は決心した。
「だいぶ動きが様になってきましたね」
「でも毎回コテンパンにやられてる」
「当然です。経験が違いますから」
毎度恒例、僕の治療を兼ねた反省会。
リナ先生に勝ったことは1度もない。戦う度に反省点が出てくるのだ。
その都度改善はしてるけど、そしたらまた新しい改善点が出てくる。その繰り返し。
それに、少し前にやった事を忘れて、なんてこともあるから上手くいかない。
「でも本当に素晴らしいですよ。君はまだ初級魔法しか覚えておらず、自分の得意属性も把握していない状態でここまで戦えているのですから」
「得意属性?」
「はい。人にはそれぞれ得意とする属性があります。私のように家系にそれが出るところも存在しますが基本は個人ごとに異なります」
リナ先生は火が得意魔法。
ふむ、得意魔法かぁ。初級魔法は全属性とも簡単に覚えれた記憶があるけど、いったいどれなんだろうか。
「得意属性を知るには中級魔法を扱うようになってから。ヒカル君はもう少し後のことですね」
まだお預けか。その時が待ち遠しいや。
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