あの頃の感覚
「ほっ。やっ」
お父さんがエルフの人たちと森に向かって1週間。
時折その方向から魔力が動いている感じがするからきっと頑張っているんだろう。
心の中で応援しつつ、僕は僕ができることを頑張る。
毎日の鍛錬のおかげで身体強化もかなりの強さまで強化できるようになった。
おかげで前世と近い力を出せる。ここまでくれば昔と同じ感覚で動けばいいから簡単だ。
身体強化の良い所は肉体を魔力で強化するから怪我もしにくくなる所。
ただのパンチで岩を殴ると痛いけど、身体強化は透明な手袋のように手を保護してくれるのだ。まさに攻防一体。
「ふっ。とりゃっ」
この世界でもうすぐ7年経とうとしてる。
それくらいの時期のブランクがあるから今のうちに動きまくって少しでも感覚を戻してとかないと。
正直、今のこの力でグラルドさんに勝てるかと言われるとちょっと自信が無い。
グラルドさんの強さは技。力やスピードもそうだけど何よりあの技が強みだ。
だから僕はそれに追いつくためにも、この前世と近い肉体で組手が出来るようにならないといけない。
「そろそろ休憩にしましょう、ヒカル様」
「もうそんな時間?」
魔力が尽きる事がほとんど無いおかげで、身体強化の練習は無限に出来る。
魔力で補助されてるから体力の消費も少ない。
こうやって声をかけてもらわないと一日中やってしまう勢いだ。
「それにしても、ヒカル様の身体強化は凄まじいですね」
「僕は魔力が多いからね」
「それだけではありません。明らかに効率が違います」
え、そうなの?
それは初耳なんだけど。
なんならお姉ちゃんとリナ先生からは効率悪すぎるって罵られてたくらいだけど。
「えぇ。ヒカル様は全身に身体強化を施しています。ですが均一に強化するのでは無く要所要所を重点的に強化することで効率的に強化しているようです」
「あれ? でも人の魔力って見れないんじゃなかったっけ」
「発動中や外に漏れ出ている魔力なら、魔法使いの方は見えるようです。当然私には見えていませんが、鍛錬中のヒカル様の動きを見ていれば一目瞭然です」
自分でも無意識のうちにコントロールしてたみたい。
血管をイメージしてたから太い血管と細い血管みたいな感じでバラつきが出てたのかな。
ま、エシルの言葉からして悪いことじゃないっぽいし、ラッキーってことで。
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