“型”
「やっぱり納得できない」
家に戻ってあれよこれよと治療をしてもらい、ナターシャが持ってきたクッキーでおやつ休憩中。
なんだか流されて待ったりしちゃったけど、やっぱりあれは納得できない。
「ヒカル様、クッキー美味しくありませんでした?」
「あ? あぁううん。クッキーは美味しいよ」
ニャシーのに比べたらちょっと物足りないけど。
納得行かないのはそこじゃない。
「エモルドゥ」
「はい」
「さっきの、何」
僕の不意打ちで始まった組手。
僕は身体強化を使ってパッと見は五分五分だった。
それで、ここだ! って時に本気を出してそれまでの2倍くらいの速度で突っ込んだ。
当たったと思ったら僕は床に転がってておでこに衝撃が走ってた。
僕の目にはそれを防ごうとするエモルドゥの腕がたしかに見えた。見えたけど、その拳がどうやってガードじゃなくてカウンターになってるのさ。
「あの構えで拳が当たるの納得できない」
「…………」
「絶対何かある。教えて」
あの瞬間に感じた違和感。
絶対何かある。この世界だし魔法的な何かが。
さぁさ教えてもらおうじゃないか。
「驚きました。まさか、そこまで見えているとは」
ふっふーん。僕、目良いでしょ。
にしてもそんなに驚かれるものなんだ。もしかして一族の秘伝とか見破っちゃった?
だったら悪いことしたな〜。
「あれは私が使ってる型の1つです」
「型?」
「理にかなった動きを体に覚えさせて使う技のことで、様々な流派があります」
ほー。
あれだな、天然理心流とかそういうやつだな。
でもそれだけにしちゃ動きが変というか。
「私が使うのは風の型で、先程のように相手の力を利用してカウンターを繰り出すものになっています」
「風ってことは属性ごとにある感じ?」
「えぇ。火水土風光闇とそれぞれの特性を活かした型かございます」
型、かぁ。ちょっと楽しそう。
「僕にもできたりする?」
「属性の型は初級魔法が使えていれば誰でも使えます。体内に魔力を流すことで体を動かす1種の魔法ですから」
魔法なの?
なるほど、それであの違和感がある動きになったのか。
つまり自分の体を自動で動かせる訳だな。……それ結構強くない?
それこそ反応が間に合えばさっきみたいに自分が出せる以上の速度で動けるんだったら相当強い。
これは何がなんでも習わないと。
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