スパルタ指導
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
「ホラホラ、それじゃいつまでも終わりませんよ」
「はぁっ、『火球』!」
誰か助けて!
いや、大丈夫。命の危機が迫ってる訳じゃあない。訳じゃないけど……。
これはあまりにもじゃない?
「甘い。威力はともかく速度が足りてません」
「はい!」
ここは屋敷横の訓練場。
正確に言うとただの庭で広場みたいな感じ。
お母さんが帰ってきた時のパーティーとかお兄ちゃんの特訓とかに使われてた場所だ。
そこにリナ先生特製の結界を張って魔法合戦をしてる。
かなり凄い結界らしくてこの中だと魔法が当たっても死ぬことは無いんだとか。お陰で遠慮なく戦える。
「うぐぁ」
「1度当てると動きが鈍る。遅くなれば次点が当たる。初手は速度重視ですよ」
「っくぅ〜〜〜!!」
遠慮が無くなったのは僕だけじゃない。
リナ先生も手加減の必要が無くなったからどんどん攻めてくる。
防げないし攻めれない。
死なないってだけで十分痛い。
痛みがあるからより強くなれる……けどツライ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「足を止めるのは悪手ですよ。ホラ」
「うぐっ……はぁ……はぁ……」
今の、本当の戦いだと死んでるんだろうな。
結界に甘えちゃってるや。
でも少し甘えさせて欲しい。不意打ちでも甘えでも、1回くらい勝ちたいし。
「その様子……なにか企んでますね」
「…………」
「いいでしょう。受けて立ちますよ」
「……」
「?」
こういうのやりたかったんだ。
待ちの構えをしてるリナ先生にニヤッと笑って上を指差す。
さぁ喰らえ不意打ち!
「『水球』!」
「これはっ」
ザッパーンっと。
僕の周りには水が来ない。自分の周りに魔力を流しておくと勝手に避けてくれる。
さてリナ先生はどうなったかな。
「…………ありゃ?」
なんの反応も無い。
結界はめちゃくちゃ凄くて水を一切通さず形を保っている。
そして結界の出入りは互いに分かるようになってるから中にいるはず。
もう1分は経ってるのに何も動きが無いとなると……まさか溺れれるんじゃ。
魔法で死ぬことは無いと言っていたけど、殺傷判定にならなくて窒息死なんてことがあったら。
考え始めると急に不安になる。
1度魔法を解除して確かめないと。
「破っ!」
さて、先生はどこかな。
「相手が私でも、これが実践じゃないとしても、相手に情けをかけて途中で手を緩めるのは絶対にしてはなりません」
「いつの間にっ」
「でないとこうなってしまいますから」
そんな真後ろにいるなん、て……ぐはっ。
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