帰ってきた
「ふぅー……」
大きく息を吸って、吐いて。
相変わらず激しいけど、どうにか抑えられてる。
今までは大荒れの海みたいな感じだったけど、今は流れるプールくらい。
意識をしっかり保ってれば平気。
ただ、常にこの呼吸法とはいかない。……色々とあったし。
でも毎日やってるおかげで暇さえあれば鍛えられている。
ご飯を食べてる時、鍛錬の休憩時間、座学の時。
隙あらばこの呼吸をして鍛えてる。
コツコツ頑張ること約2週間。グラルドさん率いる討伐隊が帰ってきた。
帰ってきたんだけど。
「うっわ、ボロボロだね」
「……ヒカル様」
「大丈夫? では無いか」
久しぶりにあったグラルドさんはボッロボロになってた。
包帯で全身を包まれててパッと見じゃ判別が付かない。こういう時は魔力で個人が識別出来るのが便利。
他にも皆どこかしら怪我してる。
「強いんじゃなかったっけ?」
「それを言われたら何も言えません」
「兵長を庇うわけじゃありませんが今回のは仕方ないです」
いつの間にか後ろにいたのは、確か副兵士長。ホントにいつ後ろに来たんだ?
名前は覚えてないけど、僕が赤ん坊の時にお兄ちゃんと訓練してた人だ。
鼻のところに分かりやすい傷跡があるから覚えてる。
「そうなの?」
「えぇ。A等級を想定し万全の状態で我々は挑みましたが、まさか「オイ」……すみません喋りすぎました」
「凄く気になるんだけど」
この様子じゃあんまり良いことは無かったんだろう。
予想より強くて失敗したとかなのかな。
「派手にやられたなグラルド」
「申し訳ありません当主様」
「この場では楽にしろ。それに、話は聞いてある」
うわビックリした。お父さんいつ帰ってたの。
この2人が顔合わせてるところ初めて見た。結構親密な仲みたいだね。
お父さんにも話が来るって……割と深刻?
「まさかこの地にも魔獣が現れるとはな」
「……あー、当主様?」
「だから楽にしろって。ん? 下になにかあ、る……」
「えーっと、お帰りお父さん」
僕を見て固まらないでよお父さん。
うん、僕に聞かれちゃまずい話だったんだね。それもそうか。
魔獣が現れた、なんて一大事だもんな。
「ひ、ヒカル! 今のは」
「僕は何も聞いてないよ?」
「……う、うむ。私は少しグラルドと話があるから外にいなさい」
「はーい」
関わらないのが1番。
お父さんたちもそれを望んでる。座学の知識だけだけど、魔獣は色々と厄介な敵らしいから。
大人しく外にいようっと。
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