2人の付き人
「よ、よろしくお願い、します!」
「うん。よろしく」
こうやって改めて向かい合うのは少しむずむずするな。
エルピス君を正式に付き人として任命することになった。のでそのご挨拶。
任命には当主代理でもあるお母さんやエルピス君の上司であるグラルドさんが参加してる。当然、雇用主である僕もね。
「では、エルピス。ヒカルをお願いしますね」
「はいっ!」
そして、もう1人。
「よろしくお願い致します、ヒカル様」
「よろしくね」
彼の名前はエモルドゥ。
この家の執事で年齢が21歳。歳だけ聞くと若いけど、今の僕から見ると凄く大人に見える。
15歳差だから当然と言えば当然か。
任命も終わって、明日から2人は僕の付き人としてずっと一緒に過ごすことになる。
「じゃ、早速出かけよう」
親睦を深めるがてら街に出て買い物でもしよう。
エルピス君はともかくエモルドゥ君……さん? は初めましてに近いからね。
彼はお母さんの推薦だった。実力があるんだって。
僕に向けられてる視線がゴリゴリ品定めしてる感じだから早めに認められたいと言うか、ちゃんと良い仲になっておきたい。
「そう言えば、エルピス君はなんで付き人に?」
「なんでって……そりゃ」
「ヒカル様。我々のことは呼び捨てにしてください。エルピス、君も言葉遣いに注意して」
うわぁ手厳しい。
でも言ってることは正しい。
僕は雇い主でエルピス君……エルピスは雇われる側。ここの上下関係は明確にしておかないとダメだ。
君付けくらい良くない? とも思うけど、それもダメらしい。
エモルドゥはエルピスと、ついでに僕の教育係も兼ねている。
僕の振る舞いが貴族らしくないから、貴族としての自覚を持てるようにと。
「分かった、気をつける。それじゃ、えと……エルピス。なんで付き人に?」
「その……元々俺は孤児で、拾われた身で。成り行きで兵士になって、あの日ヒカル……様と出会って」
もう既に懐かしく感じる。
挨拶がわりに飛んできた足を僕が躱したのが初めましてだった。
「俺はあの時、ヒカル様と一緒に居たいなって思って……それで」
小っ恥ずかしいこと言ってくれるじゃん。
まさかそんな動機だとは思ってなかった。
なんなら孤児だったことも今知ったし。
長い付き合いになるだろうし、色々ちゃんと知っておきたいな。
エルピスの事も、とーぜんエモルドゥのこともね。
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