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変わらないものと変わるもの



「いい? アンタにはアタシと同じくらいの才能があるわ。だから絶対魔法科(ウチ)に来なさい。絶対よ!」


短いようで長いような1ヶ月が過ぎて、お姉ちゃんは学園のある王都に旅立った。

その時の別れの言葉が勧誘だけなのは流石にどうかと思う。変にしんみりするのも嫌だけどさ。

熱い勧誘はありがたいけど、学園に行くつもりは無い。

色々なことが学べるのは面白そうだけど、勉強は退屈だしやりたいことは家にいれば充分できる。

リナ先生に魔法を教わって、グラルドさんに鍛えてもらう。

今の生活が充実してるんだ。わざわざ乗り心地の悪い馬車に揺られて王都まで行きたいとは思わない。……お兄ちゃんには会いたいけど。


そうだ。忘れかけていたけど、僕にはもう1つやりたいことがある。

だいぶ前に書斎の出入りは解禁されたからあの日本語で書かれた本を早速明日にでも読もう。

あの事件から沢山魔法の練習はした。もうあの時みたいな事は無い……だろう。多分、きっと。

正直魔法はかなり上達したし、リナ先生やお姉ちゃんがいればもっと強くなれる気はする。

それでも充分だろうけど。

やっぱり僕は強くなりたい。あんな死に方をもう1回するのはゴメンだ。

早いうちに前と同じ程度には戻っておく必要がある。そしたらもっと鍛錬もして強くなろう。


……そう言えば、今世の僕は随分弱いな。

まだ6歳とはいえ普通の状態じゃ岩も砕けないしジャンプ力も無い。

魔法がある世界だから弱体化を食らったのか? いや、そんなことはないだろう。

ただ単純に肉体が違うからなのだろうか。

体の感覚は前世のものに近い。だと言うのに体は今世と言うのは随分やりにくい。

常に身体強化を掛けていた方が体を動かしやすいくらいだ。

解決とまでは行かなくとも、原因は早めに見つけておきたい。


「お、どうしましたかヒカル様。今日は鍛錬の日では無かったはずですが」

「うん。今日はちょっと話があって」


いつもと変わらない日々はとても過ごしやすくて言いけれど、何も変化が無いと言うのはダメだ。

ここは1つ、目立った変化を求めてみよう。

本音はお父さんとお母さんからも進言されたからってのがあるんだけど。


「エルピス君……エルビスを付き人にしたいんだ」

「おぉ! そいつは良いことだ。早速伝えてきますね」


さて、明日から楽しい日々が始まりそうだ。

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