考慮項目:チートが無い? それは滅びます
異世界召喚された主人公にはチートが付き物ですね。
もちろん、例外はありますが。
かく言う模型戦記でも、大英君には多数のチートが付属しています。
その最たるものは何でしょう。
模型からの召喚?
確かに現地には本来存在しない特殊能力ですが、コレはまぁ、無ければお話が成り立たないので、除外しましょう。
同様に「言葉が通じる」なんてのも除きますね。
では、何か。
それは「健康を維持する」です。
多くのなろう作品、いや、なろうに限らないどころか、web小説、普通の小説、コミック、アニメ、ゲームに至るまで、程度の差はあれこのチートを持たない異世界召喚主人公は存在しないはずですが、明示されている作品は非常に限られているような気がします。
もし、このチートが無かったらどうなるでしょう。
おそらく、主人公達の半数は1か月以内に死亡し、7割方は1年以内にお亡くなりになるでしょう。
異世界の病原体(ウイルス・細菌・寄生虫)に対し、主人公は免疫がありません。
もし、適切な治療が得られる環境に無ければ、1か月どころか半月も持たないでしょう。
医療が発達していない世界では、新生児はかなりの割合で死にます。
明治の頃でも生まれた子供のうち10人中7人しか大人になれなかったそうです。
もっと昔なら、さらに数が減る。
原始時代なら、10人産んでも大人になるのは2~3人くらい。
まぁ平均寿命も20代中ごろで、30まで生きれば「長老」という話。
多くの作品で登場する中世っぽい世界はそこまで酷くは無いでしょうが、人生50年が普通な世界。
それでも現地人の免疫力は現代人よりずっと強力なのですけどね。
彼らから見れば、現代人なんてほぼ無菌状態の箱入りみたいなものですから。
(おかげで「仕事の無くなった」免疫系が誤動作してアレルギーが起きる始末)
そんな主人公が、はしかとマラリアとインフルエンザと結核にいっぺんにり患したような状態になったら、厳しいですよねぇ。
さらに天然痘と狂犬病とエイズが加われば、完全にアウト。
もちろん、そのものではなく現地の同様な病気ですが。
召喚から2日以内に現地の人と仲良くならないと、マズイですね。
東南アジアの旅行でも、生水飲んだら8割がた腹を壊します。
現地の人が平気な水でも飲んではいけません。
(最近は現地でもミネラルウォーターしか飲まない人が増えているようですが)
衛生状態・衛生観念がそれ以下の異世界なら、100%壊すでしょう。
下痢と嘔吐の繰り返し。
そうして体力を消耗した状態で、様々な病が一斉に襲ってくるのです。
幼いころからの予防接種もすべて役に立ちません。
戦いで活用するチートがどんなにすごい無敵チートだったとしても、これは防げません。
速やかにキュアディジーズが使える魔法使いとお友達に……ってそんな余裕すらありませんね。
現地の人なら「2、3日寝てれば治るよ」な病気でも、召喚主人公にとっては、どれもこれも命に係わる重篤な病なのです。
ところで、「健康を維持する」チートとセットで必要な「処置」があります。
召喚者または召喚システムには、忘れずにその「処置」を行うか「処置を行う機能」が必要です。
そう、現世からの病原体をシャットアウトする処置です。
これが無いと、召喚後現地でパンデミックです。
新大陸やインカ帝国と同じ悲劇が発生します。
「異世界より召喚された勇者がこの先の村に現れたと聞いたが……」
預言者の言葉に従い村を訪れた王の使者が見たものは、誰も居なくなった村と、行き倒れた勇者の遺体だった。
王都に報告に帰った使者は、王の目の前で嘔吐して倒れ、やがて看護の甲斐なく死亡した。
そして、後日近隣の村や、村から王都までの街道沿いから発生した謎の病で、王国はその人口を半数に減らした。
王宮でも多くの官吏・女官や王を含む何人もの王族が犠牲となった。
勇者はこの世界の病気で、王国の人々は勇者が持ち込んだ病気で、それぞれ命を落としたのだ。
なんて話になるかもしれないのです。
まぁ、大抵の異世界ものでは植生が地球と同じであるように、微生物も同じという事になっているのでしょう。
(発酵食品を製造してしまう主人公も居るようですし)
それにしても、病気について東南アジアと異世界で、異世界の方が日本に近いって事は無いと思うんですがねぇ。
大体モンスター住んでる世界だし。