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番外編:君ぃ、実践出来なきゃ科学とは言えないでしょ(推奨:「第7章 大公と勇者」に突入している)

模型戦記本編「第7章 大公と勇者」の第1回目「第41話 勇者登場 その1」まで読み進んでいれば、一応気にすべきネタバレは無いでしょう。

(気にする必要のない「新情報」はありますが、知らなくても本編を楽しむのに何ら問題はありません。 知っていればより理解が深まるかも知れません)


 ギリシャを統べる神、ガイア・パノティアは学問を人々に広める事に熱心だった。

彼女は天界の叡智を積極的に地上の民に伝えたという。

だが、時代が進みガイア神は地上を子孫たちに任せ、天界に帰る。

やがてガイア神より短命な子孫たちは世を去り、地上は人間の世界となった。


 ギリシャの人々はガイア神より伝えられた科学知識を守りつづけた。

そこには原子理論、地動説、系外惑星の知識などがあった。

こういった高度ではあるが、実生活とはあまり関係ない知識だけではなく、ワクチンの原理や抗生物質の知識など実用性のあるものもあった。

しかし、時が経つにつれ、それは失われていく。

そうして古代の叡智が失われ、暗黒時代と呼ばれる時代が来る。

人々は最早神の知識を信じなくなっていた。



「原子だなんて? 先生はそんな伝説をまだ信じているのですか」


「何を言う、この原子理論は精緻で論理的じゃ。 何より神から伝えられし天上の叡智ぞ」


「もう引退なさってはどうですか、そんなものは全くの空想ですよ。 いいですか、正しい科学というのは、実験・考察が伴うものです。 原子などという物が存在する事を証明する実験などありません」



 こうして、科学知識は廃れる。

そして、一事が万事という言葉もあり、宇宙理論が信じられなくなると共に、様々な実用知識までも失われていった。


原子理論は四元素説に取って代わられ、地動説に代わり、天動説が支持され、系外惑星の存在も忘れられていく。



 やがて時代はローマの世へ。


劣化しつつも受け継がれていた科学は、時代のプレーヤーの変化により、新たな危機を迎える。



「そんな科学に何の意味があるのでしょう。 使い道のない学問など、無駄の極みではないですか。 理解できません」


「馬鹿を言うでない、世俗の利益に供するか否かなど、学者が気にすべき事ではないぞ」


「いいえ、実用性が無い事に頭を使うなんて、愚かな考えです」



 ローマでは建築など実用性のある学問は継承されたが、それ以外は衰退したという。

直接の利益に繋がらない分野を軽視し、基盤を失った科学は劣化が進んでいく。


 本来は実用的な知識も、それを実現する手段が失われており、空想上の物として忘れられていく。

さらに、ある一神教を奉じる信徒が図書館を焼き、細々と残っていた貴重な古代の知識までも、消えてしまった。



 そして中世。



 ローマの技術は帝国の崩壊と共に失われる。

基盤の学問も無いため、技術を再生する道も閉ざされていた。

2回目の暗黒時代。 中世暗黒時代の訪れであった。


地上の人々から「神より賜った科学」が失われ、ほくそ笑む一神教の預言者。


だが、人類はいつまでも停滞を続けはしない。


 長き中世が終わり、人類は自らの手で科学を打ち立てる。

神に頼らない、真の人類の学問が花開く。


 だが、その一方で、西欧以外に残っていた神の叡智は一神教の信者によって破却される。

せっかく自ら打ち立てた科学技術で世界の海に乗り出したのだが、船員は学者では無く商人で、彼らは熱心な宗教家でもあり、自らが信じる「神」の要求(悪魔の遺産を破壊せよ)に忠実だった。



 そして現代日本。

カネにならない研究を無意味な物として扱う風潮は、その提唱者が亡くなった後も改められない。

多くの学者(それもノーベル賞受賞者)の警告も無視し、現代のローマよろしく、日本の科学は劣化が進んでいくのであった。


 この流れが世界に広まれば、人類の築いた叡智さえも、神より与えられしものと同様に再び失われ、人類の文明は後退を始めるかもしれない。

ローマが文明的に遅れたゲルマン人によって崩壊したように、現代の西欧文明を基盤とする科学も、西欧以外からの武力によって失われ、権威主義の圧制によって3回目の暗黒時代がやって来る流れが発生したなら、それは全人類にとっての不幸と言えるだろう。


「アマテラス、この風潮なんとかしなさい」


「無理言わないで、ガイアおば様」


「アレの信者が少ない日本だけが頼りなのに」


「そう言われても……、色々やりにくいのよ。 全く、90年前にダゴンが余計な事しなければ……」



 クトゥルーの使徒ダゴンの謀略に対処するため、ハスターの支持を取り付けるべく40年ほど地球を離れていた「天空神アマテラス・アメイジア」、その間に彼女の地日ノ本はその信仰と伝統を大幅に失う事態に見舞われていた。


現在の神族で星の海を渡れるのは天空神としての権能を持つ彼女だけであった。

それ故、他の星に居る神との交渉事は彼女1柱の肩にかかってしまう。


そしてその留守の間に一神教を奉ずる国と戦争して敗れ、政教分離とかいう神々にとって迷惑な掟が出来ていたという。

神威の効力は大きく低減し、アマテラスが「介入」しようにもうまく行かなくなっている。



だが、流石の神も何十年もの時間は巻き戻せない。


「全く、スサノオもツクヨミも留守番一つできないんだから……」


事情を知ったアマテラスはぼやいたと言う。


「何してくれちゃってんのよ。 戦争を止めるかとか、勝たせるとかできなかったのかしら」


神々の憂鬱の行く末はいかに。



なお、2柱の名誉のために補足すると、ツクヨミ(交易神ツクヨミ・ウルティマ)はレリアル神とム・ロウ神の秘書職、そして年老いたユマイ神の介護支援として滅多に傍を離れられず、スサノオ(諜報神スサノオ・オーリカ)はナイアルラトホテップが送り込んでくる存在を討伐するのに忙しい。

3万年前の事件から一神教の預言者もそのお仲間であると考えられているが、未だ証拠は掴んでいない。


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