クロの話 前編
でもどうすればいいのかわからなくて色々考えた結果、茜ちゃんと同じくこの世の人でなくなれば苦しい事からも解放されて二人はまた会えると思ったらしい。
いやはや、聞いてみて内容もさることながらクロの発想に驚いた。本人の為にその人自身を殺すなんて普通の感覚じゃなかなか思いつかない。
なんだろう…世間知らずというかなんというか。
やはり茜ちゃんを守る為だけに生まれてきて、それ以外には目もくれないクロにしか出来ない事だったんだと思う。
こんな事、普通はあり得ないし信じられないもの。
クロは話していてとても幼く感じる。
きっと感情に素直でただ純粋なんだと思う。
でも、だからこそ茜ちゃんの為なら躊躇わずに何でも出来てしまうというのが逆に怖い。
再びクロに聞いてみた。
「そういえばなんで茜ちゃんはお父さんの事調べようとしてたの?」
「アカネ オトウサンニ アッテミタイッテ イッテタ。」
お父さんに会って、今何を思っているのかを知りたがっていたらしいのだ。
茜ちゃんはずっと願っていた事を叶えようとしたという事か。
そっか…聞いてみて色々と納得した。
でも、実際にそれを聞いてどうするつもりだったんだろう?
「アカネ ワルイコハ オシオキダ。オトウサン アカネト ママニ ゴメンネ シテナイ。ダカラ ゴメンネ シナカッタラ オシオキダッテ イッテタ。」
「お仕置き…?それはどうするの?」
「ゴメンネ ガ ナカッタラ……コロス。」
クロの真っ黒な目がさらに深く濃い黒になったように見えた。
「…そう。茜ちゃんがそうした方がいいって言ったの?」
クロは静かに頷いた。
クロも私と似たような存在だから。と勝手に親近感が湧いてたけれど、こういう時の様子を見るとやっぱり普通に生きているモノではないんだ。
…私ですら背筋がゾッとした。
やっぱり茜ちゃんの為なら容赦しないのね。
もし暴走しても私には全く止められる気がしない。
でも、止める気はない。
だってそもそも私と同じ考え方だから。
…反省しないなら、やるよね。
「ねぇ、前から気になってたんだけど。クロっていつから茜ちゃんと一緒にいるの?」
これは私自身の純粋な疑問だ。
「1サイ クライ。ソレカラ ズット イッショ。」
そんな小さい頃から一緒だったんだ。
「アカネガ イタイトキ クロガ カワル。アカネハ ネテル。」
「え!じゃあツラいのはいつもクロだったんじゃない。毎回身代わりになってたって事?」
「ソレガ クロノ ヤクメ。アカネ マモル。」
そんな辛い思いしてたのね…。




