麻世と茜とクロ 第2話
ふんっ!アイツから色々吸収してやる。
死ぬまではしないよ?最後にどうするのか決めるのは茜ちゃんだからね。
…ま、私なら殺っちゃうと思うけど。
「あんな勝手な奴さっさと死んだらいいのよ!
大人のくせに子供をオモチャみたいに扱うなんてマトモな人間のする事じゃないもの!」
そう文句をブツブツ言いながら部屋の前まで来る。
そういえば茜ちゃんはこの部屋でどんな風に過ごしていたんだっけ?
少し集中して記憶を過去に遡る。
今は同化しているから自分の見たい所だけを簡単に見ることが出来る。
…あぁ。茜ちゃんらしい。
大人しく、されるがままだったんだ。
まぁ、仕方ない。回復するまでの間は同じようにやられておいてやるか。
それからは茜ちゃんとして振る舞い、アイツから少しずつ少しずつ体力を奪い取っていった。
しばらくしてみるみる痩せていったアイツは、ある日鏡を見て驚いていた。
ははっ。ザマァみろ!
今まで茜ちゃんにしてきた分、じわじわと苦しめてやる。
おかげさまで茜ちゃんはずいぶん元気になったからね。
男は自分が重い病気にでもなったと思ったのか、職場にしばらく休むと連絡した後で布団に潜り込んで寝てしまった。
その次の日の明け方の事。
けたたましいサイレンの音で男が飛び起きた。
男が覗く窓の隙間から少し外の様子が見えた。
「203号室の中学生だ…。」
ボソッと男が呟いた。
その時ふと、思い出した。
あのお姉ちゃんは…麻耶お姉ちゃんは元気だろうか?
茜ちゃんと同化してからすぐはやっぱりしんどくて、階段に座ってボーッと空を見上げる事が多かった。
そんな時、声をかけてくれたのが麻耶お姉ちゃんだったのだ。私は茜ちゃんとしてそこにいたのにも関わらず麻世として話してしまった。
何故か初めて会った気がしなかったのだ。
前に何処かで会ったんだっけ…?
部屋へ戻ってからもしばらくは思い出せなかった。
麻耶…麻耶?
…あっ!まや?
え?嘘でしょ?こんな偶然ってあるのかな。
でも考えれば考えるほど辻褄が合う。
あれからそんなに時間が経っていたのか。
言われてみればあの笑顔やふんわりした髪の毛。
やっぱりあれはあの時見た"まや"としか思えない。
あんなに大きくなったんだ…。
嬉しいなぁ。
でも…私はお母さんを殺してしまった。
可愛い妹だけど私が姉である事は決して知られてはならない。それからしばらくは子供の麻世としてすでに死んでいる事も実の姉である事も隠して会っていた。
でも、楽しかった。本当に。




