麻世の過去と茜 第4話
やっぱり何があったのか茜ちゃんの記憶を探るのが一番早いか。
でも…実はこれってかなり疲れるし、しかも覗いた相手の感情に引っ張られてしまうのだ。
まやの時もそうだったけど、余計な邪念みたいなのが無い子供の方が特に影響されてしまう。
私自身、見た目はともかく年齢はあの時のままで止まってるし、子供って感情がストレートだから直接訴えかけてくるものがあるみたいで。
きっと同じような境遇だからより共感してしまうだろう。
特に今回の茜ちゃんはすでにこの世の人ではないので尚更だ。
持っている感情が極端になっている可能性もあるから、私が自分の意思で力を制御出来ればいいけど…。
一抹の不安を抱えながらも、私がどうにかしなければという気持ちに抗えない。
覚悟を決め、茜ちゃんの後ろへと静かにスゥッと近づく。
気づかれないかドキドキしたが、あまりにボロボロの状態で茜ちゃんがこちらに気づく様子は全くない。
可哀想だけれど、これなら私だと気づく事はないだろう。
そっと頭に手をかざして茜ちゃんの記憶を辿っていった…。
私と別れたあの後、やっぱり母親に気づいてもらえず毎日泣いて過ごしていたみたいだ。
本当に申し訳ないことをしてしまった。
私がウメさんに迷惑をかけない為に…と自分の事を優先してしまったからだ。
やはりこのままには出来ない。
茜ちゃんを助けないと…。
そうしてたくさん泣いて、疲れてボロボロになった所をこのアパートに住んでいる201号室の男に拾われたようだ。
親切な人に助けてもらえたのかと思ったのに。
…コイツはすぐに本性を現した。
親切に見えたのは最初だけでこの男も最低な人間だった。
何なの?「人間を飼ってみたかった。」って。
意味が分からない。
本当にこのアパートには頭のおかしな人間しか住めないんじゃないだろうか?と思う。
そんな条件でもあるかのようにことごとくマトモじゃない人間にしか出会わない。
そうして記憶を辿っていると茜ちゃんの気持ちが私へと流れ込む。
痛い…
苦しい…
悲しい…
寂しい…
どうして…ド、ドウシテ……?
アイツノセイダ。アイツノ。
だんだんと気持ちが受け止めきれなくなっていく。
このままだとこの気持ちに飲み込まれてしまう…!
バッ!
慌てて一度手を離す。
ふぅっと息を吐き、気持ちを立て直した。
ちょっと危なかった…。
茜ちゃん、かなり心に負担がかかってるみたいだ。
危うく飲み込まれて暴走してしまう所だった。
どうしよう…続けるべきだろうか?




