麻耶と麻世の過去 第1話
最初に出会ったあの日から麻耶は毎日のようにアパートに来ては私と話をしたり、お菓子を買ってきて食べさせてくれたりしていた。
それが一週間程、続いたある日。
麻耶とあの中学生が並んで学校から帰ってくるのを見た。
麻耶は一生懸命に話しかけていたが、相手の反応は悪くあまり会話が弾んでいるようには見えなかった。
「あの子ね、あ、楓ちゃんっていうんだけど。楓ちゃんね、少しずつお話してくれるようになったんだよ!」
その楓が家へ入ったのを確かめてから、麻耶は私を近くの公園へ誘ってくれた。
きっと誰かに話したいのだろう。
ニコニコしながら私にもわかりやすいように、たくさん楓の話をしてくれた。
「友達になれたらいいのにな…。」
ふいに寂しそうに麻耶が呟いた。
「たくさんおしゃべりしたら、お友だちでしょ?」
私が聞くと、麻耶は困ったように笑って眉を下げた。
「そうなれたらいいんだけどね。私も転校生だったから、楓ちゃんの気持ちがわかるんだ。結構、複雑なのよ?」
そう言うと、転校してすぐにいじめられた事や今も周りを信用出来ずに苦しい時があると教えてくれた。
「私、しんどかったからさ。楓ちゃんには同じ思いして欲しくないんだよね。」
この人はなんて優しいんだろう。
こんなにも優しい麻耶とならきっと楓も仲良くなれるだろうと思った。
それからしばらくは麻耶に会えない日が続いていたのだが、ひと月程した頃に麻耶と楓を見かけた。
とても仲良さそうに笑いながら並んで歩いていた。
私は、二人が友達になって楽しく過ごしているんだとばっかり思っていた。
麻耶は私が死んでいる事を知らない。
人ではない私より同じ世界に生きている友達と過ごす方が彼女の為になるだろうと思い、この先麻耶には会わないでおこうとその時に決めた。
私がいなくてもきっと麻耶なら大丈夫!
「…麻耶お姉ちゃん、バイバイ!」
小さく呟き、お別れした。
しかし、その別れが間違いだったと気づいたのは麻耶が死んでしまってからだった。
気づくのが遅すぎた…。
あの台風が過ぎてから数日経ったある日。
…今はとにかく部屋に居たくなくていつもの階段に座り、空を眺めていた。
足をプラプラと投げ出し、澄んだ青空と夏の気配がする雲を見ていた。
そんな私の隣にスゥッと麻耶が現れたのだ。
「えっ!麻耶お姉ちゃん!?なんでここに…?」
…麻耶は泣いていた。
「どうしよう。わ、私……」




