麻世と麻耶の出会い 後編
私は麻耶を守ろう。
私を…私の心を暖めてくれた彼女を出来る限り守っていく。そう決めた!
決めたのに…。
彼女は死んだ。
例のこのアパートに住むクラスメイトに殺されたのだ。
あんなに心配していて仲良くしたいと笑顔で語った彼女がなんで…?
怒りが込み上げ抑える事が出来なかった。
アイツをどんな手を使っても殺してやる!
…お仕置きだ。
またあの時の事を思い出していた。
何度思い出しても怒りで身体中が震える。
麻耶を殺したアイツだけは絶対に許さない!
……
201号室の男の所へ向かう。
きちんと調べてくれたのかしら?
部屋へスゥッと入ると男は正座して待っていた。
「あらら。どうしたの?ずいぶんとかしこまって。」
「い、いや。俺、お前に謝らなきゃならないと思ってよ。本当にすまなかった!」
男は言葉と共に頭を床に擦り付け、私に土下座した。
「なぁに?それ。そんな事で私にした事が許されると思ってるの?」
…ちょっと意地悪してみたくなった。
「こんな事で許されるなんて思ってない。でも、こうでもしなきゃ俺は…俺は!」
しょうがない。許してやるとするか。
まぁ、今こうして謝った所でコイツの記憶は消すつもりだしね。
「わかったから頭を上げなさいよ。とりあえず許してあげるわよ。」
男はバッと頭を上げ、驚いた顔でこちらを見ている。
「本当か!?本当に許してくれるのか?」
「とりあえずよ!と・り・あ・え・ず!!」
「そ、そっか。そりゃそうだよな。…ごめん。」
いい歳した大人がシュンとしょげている。
「そんな事より、昨日頼んだ事調べられたの?」
「そんな事よりって…。ま、まぁいいか。調べられたぞ。都内にいるらしい。」
「近くにいるのね?」
「そうだ。医療少年院って所にいるみたいだ。」
「医療少年院?なぁに?それ。」
素になっているのか可愛い声で麻世が聞いた。
「なんだよお前。急に子供みたいになったり怖くなったりよくわかんねぇな。」
「悪い?子供の時に死んでそれから十何年もこうしてたらおかしくもなるわよ。それよりそれ何処なの?」
「あ、あぁ。都内にある病院みたいな施設らしい。未成年の犯罪者で治療すれば更生の余地があると判断された奴が行くそうだ。」
「…更生の余地ねぇ。そんなのないわよ?」
ボソッと言う声はさっきとは打って変わってとてつもなく低い。
これだよ!
コイツのこういう所が怖いんだよ!
「で、これからどうするんだ?」
「そうね。どうしてやろうか…。」
麻世は真っ暗な目で笑った。




