麻世と麻耶の出会い 中編
「お友達?…私とお友達になってくれるの?」
私は恐る恐るお姉ちゃんに聞いた。
「もちろん!こんなに可愛い子なら大歓迎!よろしくね。」
「うんっ!麻耶お姉ちゃんありがとう!」
二人で顔を見合わせ微笑んだ。
私はすでに死んでしまっていてこの世のものではない。
だからどうして彼女が私を認識して普通の人のように
…生きている人にするように声をかけてきたのかわからない。
長い間こうして過ごしているとこちらから接触しなくても反応を示す人間は時々いる。
ただ、そういう人間はたいてい他で嫌な目に遭っている事が多いのだ。
もし私を見つけても目を合わせぬように下を向いたまま早足で行ってしまうか「しまった!」という顔をした後に何食わぬ顔で気づかなかったフリをする人間がほとんどだった。
やはり気分の良いものではない。
だが、彼女はそうした人間とは違っていた。
よくいう霊感などというものは持ち合わせておらず、本当に私とだけチャンネルが合ったというかピントが合ったというか。
何だかピタリとハマった感じがしていたのだ。
彼女の横はとても居心地が良く私は安心して過ごす事が出来た。
その後何故ここに来たのか聞いてみると、私が居着いているこのボロアパートに転校生のクラスメイトが住んでいると先生に聞いて来たそうだ。
「その子ね、転校してきたばかりでなかなかお友達が出来ないみたいなんだ。私は仲良くしたくて話しかけるんだけど、もしかしたら嫌がられてるのかも…。」
彼女は悲しそうに笑った。
「大丈夫だよ!お姉ちゃん優しいもん!絶対仲良くなれる!」
私は少しでも元気づけたくて笑って言った。
「ふふ。ありがとう!麻世ちゃん優しいね〜。」
そう言って彼女は私の頭を撫でた。
「何故、私に触れるの?」とか疑問に思う事はあるがそれよりも彼女の手の暖かさに私は嬉しくなった。
こんな風に誰かと触れ合うなんていつぶりだろうか?
…ずっと一人でフラフラとこの世を漂っていた。
自分と同じ思いをする子がいたら助けるんだ!なんて意気込んでいたものの、長くこうしていると自分が何者なのかよくわからなくなってくる。
いつの間にか消えるタイミングも逃してしまって、何の為にここにいるのか理由のないまま時間だけが過ぎていく。
そんな私に彼女は笑いかけたのだ。
嬉しかった。…本当に。
生きていた時は実の両親すら暖かくて接してくれなかった。死んでからは誰も見てくれさえしない…。
一人はツラい。
だから決めたんだ。




