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ボロアパート  作者: さち
223/270

茜とクロ 第8話

「私はクロ。貴方の味方だよ。」

彼女はそう言って笑った。


その笑顔で私は強ばった心が解けていくのを感じた。




……


「…なんか寒い。普段あまり感じないんだけどなぁ。」


病院を出てアパートへ向かうクロはフラフラと空を漂いながら言う。もうすっかり日は落ちて秋の気配を感じる少し冷たい風に再びブルッと体を震わせた。


「あれ?真冬でもこんな風になった事ないのに…なんで?」

クロは今まで感じた事のない感覚に驚いていた。体がフワフワした感じがして頭がボーっとする。


「…早く茜の所に行かなくちゃ。」

クロはフラつきながらも少しスピードを上げてアパートへ向かった。





いつもなら10分程で着く距離なのに倍の20分もかかってしまった。

「はぁ〜やっと着いた。疲れた…。」


ようやく一段落したとホッとしたのも束の間。

アパートの裏手からうめき声が聞こえた。


「ん?誰かの声?…あ、たぶん茜だ。あの黒いモヤの気配がする。」

やはり今日は何か変だ。普段なら少し離れていても気配を感じられるのに、こんなに近づいてから気づくなんて…。


ずっと空を飛んで疲れたのか、なんだか今は飛ぶ気がしなくてクロは歩いて声のする方へと向かった。


アパートの裏は洗濯物が干せるようなスペースになっていて、いくつか使われなくなった物干し竿がそのままになっていた。クロはアパート横の狭い通路を抜けて歩いて行く。


角を曲がると裏へ出られるのだが、再び声がしたので慌てて向かう。


「う〜ん。やめ、て……来ないで……。」


唸っているような小さな声が聞こえる。一番手前の物干し竿の辺りであの黒いモヤが風に揺れるゴミ袋のようにフワフワしているのが見えた。

クロは驚いてそのモヤへと近づいて声をかける。


「茜っ!大丈夫!?…… 茜!ねぇっ!茜ってば!」

苦しそうにもがくソレはたぶん…というか、間違いなく茜だった。とにかく苦しそうなので肩を揺すって起こした。


目が覚めた茜は私の顔を見るなり青ざめていく。

「ひっ!やめてっ!!来ないで!」


怯えて後ずさりする茜を見て、クロは訳が分からず首を傾げた。


「どうしたの?…大丈夫?なんかうなされてたよ?」

「…えっ?」

悪い夢でも見ていたんだろうか?今の状況を受け入れられないみたいだった。


「苦しそうだったから起こしたんだけど。なんかごめんね。」

「え、夢…?あ、貴方は誰なの?」

信じられないという表情のまま茜がこちらを見ている。


「私はクロ。貴方の味方だよ。」

そう笑って答えた。

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