茜とクロ 第7話
私はいつからここにいたの?
真っ暗で何も見えない。
何の音も聞こえない。
私の他に誰かいるの?
「…ねぇ?誰かいるの?」
声をかけてみたけど返事はない。
ただ、私の声が響くだけ。
ずっとずっと一人ぼっちだった。
時々誰かの笑い声が微かに聞こえる事もあったけれど、それが誰なのか私は知らない。
「…茜?……ねぇっ!茜なんでしょう!?」
誰かの声がする。
私を呼んでるの?
貴方は誰なの?
「ねぇ!茜ってば!!」
肩を揺すぶられた気がしてハッと目を開く。
目の前にいたのは女の子だった。
可愛らしいその子の大きくてキラキラした目を私は真っ直ぐ見られなかった。
思わず眩しさで目を逸らしたが、それは外の明るさだけじゃなかったと思う。
「やっと起きた〜!も〜お寝坊さんだなぁ。」
その女の子はしょうがないなぁ〜と言いながら私の髪を撫でた。私は何が何だかわからず彼女に聞いた。
「…あの、貴方は……誰?」
「え、わからないの?私は貴方。貴方は私。私達は二人で一つだよ。……ね?」
そう言って微笑んだ彼女の顔がみるみる崩れていく…
目が赤く光り、顔は影がかかったように黒くなっていく。
髪はボサボサに逆立ち、開いた口の中も真っ赤で鋭い牙が見えた。
「ひっ!な、何!?嫌だっ!こっちに来ないで!!」
私は腰が抜けたのかすぐには立てなかった。しかし、何とか四つん這いの様な状態から慌てて立ち上がって逃げる。
「ねぇ?なんで逃げるの〜?私達は一緒にいなくちゃ駄目なんだよ〜?」
「やめてっ!こっちに来ないで!!」
真っ暗な中を前も後ろもわからない状態でひたすらに走って逃げる。
「はぁっはぁっ……どこへ逃げたらいいの?」
彼女はゆっくりゆっくり追いかけてくる。捕まえる気があるのだろうか?私を追いかけて楽しんでいるようだ。
ドサッ…
足がもつれて転んだ私の上に彼女が乗る。
「やめて…お願い。」
ニタァッと笑った口が真っ赤に染まっていた…
……
「…茜!ねぇっ!茜ってば!」
私はう〜んと唸りながら目を開く。
そこにはさっきの女の子。
「ひっ!やめてっ!!来ないで!」
怯えて後ずさりする私を見て、クロは首を傾げた。
「どうしたの?…大丈夫?なんかうなされてたよ?」
「…えっ?」
また襲われると思った私は心配する様子の彼女を見て状況が受け入れられない。
「苦しそうだったから起こしたんだけど。なんかごめんね。」
「え、夢…?あ、貴方は誰なの?」
信じられないまま彼女に問う。
「私はクロ。貴方の味方だよ。」




