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ボロアパート  作者: さち
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茜とクロ 第4話

しばらく様子を見ていたが男は「スゥ…スゥ…」と寝息を立てている。…大人しく眠ったようだ。


クロは男がしっかり眠った事を確認してから、先程気を失ってそのままになっていた母親へと近づいた。


口元へ手をかざしてみるが、手のひらに微かに息が当たった。きちんと呼吸はしているし、顔色も悪くない。

強く頭を打ったりはしてなさそうだ。


無事を確認して、今度は母親のおでこに手を当てた。

そう…この女の記憶を改ざんする為に。


クロは再び集中する為にフゥッと息を吐いて、母親の記憶の中へと入っていく。

途中あまり見たくないモノも見えてしまったが、実はよくある事だったりする。


誰もがいい大人になるまで何一つ悪い事もせずに真っ当に生きているなんて事はない。

たぶんそんな人間はこの世に存在しないのだろうと思う。



…誰にでも知られたくない過去があるという事だ。





まぁ、そんな事はクロには関係ない。

さっさと済ませてここから立ち去らなければならないのだから。


さっき見られてしまった男の姿を記憶から消す。

死んだと思い込まれたままだと後が面倒だから、クロが今見た男の眠っている姿の記憶とすり替えたのだ。


まぁ、時間の感覚は誤魔化さなくても何とかなるだろう。

「…さて。これでよしっと。はぁ〜疲れたぁ〜。」


母親が目を覚ました時に違和感がないように、男が眠るベッドに突っ伏した形で椅子に座らせた。

これで疲れて眠ってしまったのだと思うだろうと考えたのだ。



その後、クロは姿を隠して母親が目覚めるのを待った。

5分ほど待っただろうか?様子を見ていたら母親がモゾモゾと動いた。

「…う、う〜ん。……はっ!?あの子は?」

母親が飛び起きた。


「……あ、あらっ?……よく眠ってるわね。さっきのは何だったかしら?きっと何か良くない夢でも見たのね。…きっとそう。何だか変な気分だわ。」と一人でブツブツ言っている。


クロはホッと息を吐いた。

これで一安心だ。母親は夢だと思い込んでくれたらしい。



(この二人はしばらくは大丈夫だ。また近々様子を見に来よう。)

クロは来た時と同じように窓からスルリと外へ出て、フワフワと空中を漂いながら再び深いため息をついた。

「はぁ〜。何とかなって良かったぁ。……あ、でもまだ確認しなきゃならない事があるんだった。」


……201号室の男の容態と茜らしきあのモヤの事だ。

ひとまずウメさんの気配を辿ってみた。

あの人はたぶんすぐに見つけられるはず…。





「…あ。見つけた。」

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